1億総自営業の時代

そしてこれは一般個人にとってもチャンスです。

前述の通り、企業が正社員の削減に動けば失業者が増えるのでマイナスではないか、という意見もあると思います。

しかし副業が当たり前の流れになっている昨今、すべての労働者が自営業を兼ねる時代になる(それができる人が生き残れる)のではないかとすら感じます。

テレワーク・リモートワークの普及で、通勤、移動時間の削減や業務効率の向上ができれば、この時間を他で活かさない手はありません。

インターネットサービスが発展した今、コストをかけずに誰でもクリエイターやインフルエンサーとして活躍できる可能性があります。

特にネットと親和性の高いクリエイティブの世界(たとえばイラストやデザイン、文章、写真、作詞作曲などデジタルで納品できる仕事、あるいは芸術・工芸・アクセサリーなどのハンドメイド商品)は、個人の創造力と想像力に依存し、会社で要求されるビジネススキルやマネジメントスキルなどは不要です。

本人の容姿や魅力やカリスマ性やリーダーシップも不要です。たとえば漫画家や作家がしゃべっているのを見たことがある人は少ないでしょうし、顔さえ知らないという人のほうが多いと思います。

私の知人にも漫画家や作家がいるのですが、超がつくほどオタクでネクラ。それでも成立するのが現代なのです。

これらの分野に携わる人の多くは給与所得者ではないので、なかなか統計には出てこないものの、人知れず年収数千万円~1億円以上を稼ぐ人はザラにいます。

私も著者の一人としてビジネス書作家を多数知っていますが、そのうちの一人は「家からはあまり出たくない」「あまり人と会いたくない」と言っているくらいの引きこもり。

そういう彼は本の執筆印税やコラムの原稿料、YouTubeの動画配信から得られるアフィリエイト報酬で年収1億円以上あります。そしてかかる原価は自分の時間だけ。

そういえば以前、あるバンドの女性ボーカリストの確定申告書を見たことがあります。平成初期に活躍したバンドで、当時すでに活動を休止して彼女は専業主婦でしたが、事業収入は1億円以上もありました。

収入の内訳は、ほぼJASRACやレコード会社からの印税。彼女は作詞とボーカル担当だったので、主に作詞印税と歌唱印税だと思われますが、自分の曲がカラオケで歌われたり、ショップのBGMで流れたりするたびにお金が入ってくる、まさに現金自動販売機です。

曲が一度ヒットすればその資産だけで何十年も食べていけるという音楽印税の破壊力に、私も驚いたものです。

お金をかけない起業・副業が当たり前に

むろん前述の作家や彼女の例は特殊かもしれませんが、会社員でもフリーターでも専業主婦でも、あるいは性格が内向的であろうがオタクであろうが、今や様々な方法で稼ぐことができるのです。

繰り返しになりますが、インターネットを活用すれば初期投資もランニングコストもほとんどかけずに起業できます。

ブログやSNSならタダで始められるし、カード決済機能付きのホームページを作っても数万円程度。商品が音声や動画、PDFなどのデジタル商材であれば、在庫を抱えることもない。昨今は法人でなければ取引しないという企業は減っているので、法人格も不要。

もはや「お金をかけないと起業や副業はできない」などという考え方は通用しない時代なのです。

これは大きなチャンスだと思いませんか?

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午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士

1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。