ジェンダー・ギャップが女性より男性を不幸にするワケ

さて、ジェンダー・ギャップ指数からは、日本の政治・経済分野への女性の進出度が低いことがわかりました。では、幸福度はどうでしょうか。これは男性が低く女性が高いという結果で、しかも他の国々に比べて圧倒的な高低差があります。

日本の女性の幸福度は、他国に比べてものすごく高いというわけではありません。これほど高低差があるのは、男性の幸福度が異様なほど低いからなのです。ジェンダー・ギャップ指数とは真逆の結果であることを考えると、日本の男性には、社会進出を果たしている分「稼がねばならない」というプレッシャーが大きくのしかかっているのではと思います。

だからこそ、女性だけではなく、男性も含めた全員の働き方を変えるべきなのです。日本では、ここ30~40年ほどで出来上がったガラパゴス的働き方がいまだ主流です。新卒で採用し、長期間かけて育てた「人」に対して仕事や勤務地を割り振る「メンバーシップ型雇用」もそのひとつ。長時間労働や、意に沿わない転勤を生む原因にもなっています。

それに対して、欧米では仕事や勤務地に対して人を割り振る「ジョブ型雇用」が一般的。仕事の範囲が明確で長時間労働につながりにくく、柔軟な働き方も比較的実現しやすいのが特長です。

近年はこの特長に着目して、ジョブ型雇用を取り入れる企業も増えてきてはいますが現状ではまだまだ少数派です。

ジェンダー・ギャップ解消は男性のためでもある

日本のジェンダー・ギャップ指数を向上させるには、最も足を引っ張っている政治分野と、二番目に足を引っ張っている経済分野で女性リーダーを増やしていくしかありません。

そのためには、政治分野では前述の通り国民の意識変化が必要でしょう。そして経済分野では、各企業における「男性的な働き方の抑制」が重要になります。こうした真の働き方改革が進めば、日本の男性の幸福度も徐々に改善していくはずです。

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筒井 淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学教授

1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)などがある。