洗濯は分けなくても大丈夫

──食事や洗濯はどうしたらいいでしょうか。

【高山】食事は隔離した部屋のドアの前に置き、本人が取りに行くようにします。食べ終わった食器はドアの前に出してもらいましょう。辛いかもしれませんが、対面で受け渡しを行うことは避けてください。どうしても対面で対応しなくてはいけない場合は、介護者もマスクをつけましょう。

また、患者さんが使った食器や箸、スプーンにはウイルスが付着している可能性があるので共有を避けるほか、子どもが触ったり口に入れたりしないように注意をしてください。ただし、普通の食器用洗剤でしっかり洗えば、他の家族も使うことができます。

汚れているタオルや衣類、シーツなどを取り扱う際は、使い捨ての手袋とマスクをつけましょう。患者さんが使用したものと家族の汚れ物を分けて洗う必要はないので、普段通りに洗濯をして十分に乾かしてください。洗濯をした後は家族も使えます。

このほか、患者さんが使ったティッシュやマスクなどは、他の人が触れないように、すぐにビニール袋に入れて密閉しておきましょう。可燃ゴミとして捨てる際は袋の口をしっかりしばり、捨てた後は必ず手洗いをしてください。同居しているご家族が手指消毒と石けんを使った手洗いをすることが、二次感染を防ぐ鍵です。

また家族の中に重症化リスクが高い高齢者がいる場合は、一時的に親戚の家に避難させるなど、感染から守ることを検討してください。

乳幼児がいる母親が感染した場合は……

──世話を必要とする乳幼児がいる母親が感染した場合はどうしたらいいのでしょうか。子どもが感染しても軽症ですみますか?

【高山】他に世話をすることができる人、多くの場合は父親に頑張ってもらいましょう。とくに乳児はCOVID-19に限らず感染症に脆弱です。小児の多くが軽症であると考えられていますが、肺炎を発症するなど重症化する事例も報告されているので注意深い見守りが求められます。ただし、死亡することは稀です。中国で確定診断された18歳以下の小児2,141例の報告では、死亡したのは14歳男児の1例のみでした。

本来、家族のなかに一人でも感染者がでた場合は、同居する全員に2週間の自主隔離が求められます。しかし、仕事や生活必需品を買いに行くなどやむなく外出することもあるでしょう。その時は第三者との距離を2メートル以上とる「Social Distance」を心がけてください。

構成=井手ゆきえ 写真=iStock.com

高山 義浩(たかやま・よしひろ)
沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科 副部長

福岡県生まれ。東京大学医学部保健学科卒業後、フリーライターとして世界の貧困と紛争をテーマに取材を重ねる。2002年山口大学医学部医学科卒業、医師免許取得。国立病院九州医療センター、九州大学病院での初期臨床研修を経て、2004年より佐久総合病院総合診療科にて地域医療に従事。この頃より人身売買被害者を含む無資格滞在外国人に対する医療支援を行なう。2008年より厚生労働省健康局結核感染症課においてパンデミックに対応する医療提供体制の構築に取り組む。2010年より沖縄県立中部病院において感染症診療と院内感染対策に従事。また同院に地域ケア科を立ち上げ、退院患者のフォローアップ訪問や在宅緩和ケアを開始。『アジアスケッチ 目撃される文明・宗教・民族』(白馬社、2001年)、『ホワイトボックス 病院医療の現場から』(産経新聞出版、2008年)、『地域医療と暮らしのゆくえ 超高齢社会をともに生きる』(医学書院、2016年)など著書多数。