仕事でも家事でも育児でもない時間を

今は女性の習い事のように思われていますが、もともと生け花は、男性もハマりやすい趣味だと思うんです。室町時代に発祥したころは男性中心でしたし、要は立体造形なので、子どものころにプラモデルやジオラマなどに親しんだ男性には親和性があります。

歴史のある、はやり廃りのないものですし、いい趣味を見つけたなと思っています。今までは、仕事が趣味だったんですが、生け花という明確な趣味ができたことによって、「仕事ではないこと」が、日常の中に習慣として織り込まれるようになった。こういう時間がもてることには本当に救われています。

僕が編集長を務めている『FINDERS』は、「ビジネス×クリエイティビティ」をうたっているんですが、やはり誰にとってもこの2つがないと、サステナブルではないと思うんです。

僕の場合は経営者でもあるので、24時間365日仕事のことを考えてしまうんですが、生け花をやっているときはそこから解き放たれて、何もかも忘れてお花と向き合います。そして、作品を完成させる喜びがある。仕事でも、家事でも育児でもない時間が日常生活の中で少しでもとれると、心に落ち着きが生まれますよ。

家でダンベル、スクワット、腕立て伏せの日々

余暇の過ごし方は、単に「自由な時間をどう潰すか」ではありません。自分の生活を豊かにするもの、社会とのつながりをもたらすもの、加えて、できれば心身の健康につながる過ごし方ができるとなおいい。

以前から、世界的に健康志向は強まっていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大で、健康に対する意識はさらに高まっています。人生100年時代と言われますが、寝たきりで100歳まで生きるよりも、健康で長生きしたいという欲求は高い。

とはいえ僕も、今は新型コロナの影響で生け花教室も締まっているので、花材を買ってきて家で活けるしかありません。映画も見に行けないし、スポーツジムにも行けませんから、家でダンベル、スクワット、腕立て伏せ、腹筋をやっています。

今は誰もができる範囲のことをやるしかありませんが、ポストコロナの余暇につながる「何か」を見つけるための時間にすると良いと思うんです。

構成=大井 明子 写真=iStock.com

米田 智彦(よねだ・ともひこ)
FINDERS 編集長

1973年、福岡市出身。出版社、ITベンチャー勤務を経て、文筆家・編集者・ディレクターとして出版からウェブ、企業のキャンペーン、プロダクト開発、イベント開催、テレビ、ラジオへの出演と多方面で活躍。2011年の約1年間、旅するように暮らす生活実験「ノマド・トーキョー」を敢行。ウェブメディア「ライフハッカー[日本版]」の編集長を経て現職。著書に『僕らの時代のライフデザイン』(ダイヤモンド社)、『デジタルデトックスのすすめ』(PHP研究所)、『いきたい場所で生きる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)等がある。