「自分は大丈夫現象」を確認した心理学の研究

オーストラリアにあるディーキン大学の心理学者ロン・ゴールドは、「他の人は感染するかもしれないけど、自分は大丈夫だよ」と判断してしまう傾向が私たちにはあることを確認しています。

例えば、

「これから6年以内にあなたが解雇される見込みは?」
「6年以内に平均的な人が解雇される見込みは?」
「これから5年以内にあなたが麻薬常習者になる見込みは?」
「5年以内に平均的な人が麻薬常習者になる見込みは?」
「これから4年以内にあなたがエイズウィルスに感染する見込みは?」
「平均的な人が感染する見込みは?」

などと質問すると、すべての場合において、「平均的な人はそうなるかもしれないけど、自分は大丈夫」という非常に非現実的な判断をしていることが明らかになりました。

根拠など何もなくとも、私たちは漠然と「自分は平気」だと思い込みやすいのです。

男性のほうがリスクを過小評価しがち

また基本的に男性のほうが「リスクを小さく」判断することもわかっています。そのため、男性のほうがさまざまな依存症になりやすいのです。「自分だけはギャンブル中毒にならない」「アルコール中毒にならない」と思い込んでいるため、予防策をとらないからです。

もちろん、「なるべく外出するのをよそう」と考える人もいます。そういう人は、いろいろなメディアを使って、できるだけたくさんの情報を集めようとしている人です。たくさんのニュースに接することによって危機意識を高めているので、「自分だけは例外ともいっていられないな」と判断し、外出を控えるのですね。

あまりニュースを見ていない人がふらふらと街に出かけてしまうのは、危機意識がないため。普段と変わりない日常が続いていると感じているので、まさか自分が感染するとは思いもよらないのでしょう。

ですから、おじさんに出社を思いとどまらせるには、とにかくコロナウイルスが危険であるという情報を認識してもらうしかありません。危険であるという情報に接すれば接するほど、「なるほど、これは私もヤバいかもしれない……」と考えてくれるはずです。