全然アクティブじゃない日本の「アクティブラーニング」

小学校では今年2020年4月から、中学校では2021年4月から、子どもたちが対話をしながら主体的に学ぶ「アクティブラーニング」が全面導入されます。

小学校の教科書はもちろんですが、来年から使われる中学校の教科書も既に出ているので、その中でアクティブラーニングがどのように扱われるかがわかります。

ぜひ皆さんにも見ていただきたいんですけれど、これが「むちゃくちゃアクティブじゃない」んですよ。「ここでグループに分かれましょう」「課題を決定しましょう」「決定した課題をこの欄に書きましょう」と、ものすごくマニュアル化してるわけなんです。こんな手取り足取り誘導していたら“アクティブ”になんて学べませんよ!

そもそも、アクティブラーニングのためのマニュアルが存在することが、まず本末転倒。教師は、教科書に従ってその通りに授業を展開していけば、いかにもアクティブラーニングをやっているかのような錯覚に陥ってしまいそうです。でもそれはものすごく危険なことです。こんな様子では、スタートから失敗しますよ。もっと現場の先生の意欲や力を信頼しなくちゃいけないし、もっと先生をいい意味で悩ませなくちゃダメなんですよ。試行錯誤をさせてね。マニュアルありきでは教師をつぶしてしまいかねない。ちょっと絶望的だなぁと思いました。

今、尾木ママなら子どもにどんな課題を与えるか

私が教師ならどうするか? そうですね、新型コロナウイルスの問題を探究させますね。新型コロナウイルスとは一体どんなものなのか、国の対応策や社会の反応、メディアの取り上げ方などについて、日本は台湾、韓国、イタリアなどの取り組みとどう違ったのか、何が一番的確だったのだろうか、世界がどんな風に協力したらいいのか……。いろんなテーマが考えられます。子どもたちそれぞれのレベルや関心によって、テーマを決め、自分で調べて研究して、レポートにまとめさせるといいでしょうね。パソコンをつかってまとめて、オンラインで世界に送ってもらうこともできます。それこそがアクティブラーニングなんですよ。

「地域が子どもを育てる」原点見つめて

これほどに、世界規模で戦わなくてはならないような大きな難題を、取り上げない手はないと思います。アクティブラーニングにはぴったりの題材でしょう?

日本は、いつ大きな災害が来るかわからない国ですし、新型コロナウイルスのような感染症が、今後いつまた上陸するかもわかりません。

少し先の話になるかもしれませんが、今回の新型コロナウイルス拡大への学校対応については、各学校や教育委員会、文部科学省で忌憚ない意見を出し合い、振り返って総括する必要があると思います。反省すべきところは反省し、今後に繋げないといけません。

家庭では、自然災害のときと同様、今回も地域のつながりの重要性を、あらためて実感されたと思います。子どもは親だけでは育てられません。「地域が子どもを育てる」という原点を見つめて、地域のつながりを大切にしてほしいと思います。

構成=大井明子 写真提供=尾木直樹氏

尾木 直樹(おぎ・なおき)
教育評論家・元法政大学教授

1947年、滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、私立海城高校、東京都公立中学校教師として、22年間子どもを主役とした創造的な教育を展開、その後大学教員に転身して22年、合計44年間教壇に立つ。「尾木ママ」の愛称で親しまれ、テレビ出演や講演活動にも精力的に取り組んでいる。