「世代の違う女子の感覚がわかる」ことが武器
【原田】自分なりの“バズる秘訣”をしっかりつくりあげているんですね。でも、りょうくんは今31歳ですよね。一般的には、30代の男性にとって20代女子の反応を予測するのはとても難しそうに思えます。
【りょうくん】今のところ、写真への反応にはあまり男女差はないですね。でも、店の雰囲気や味に関しては、女性のほうが反応が細やかだと感じています。そのあたりは、一緒に行く20代の女性に感想を聞くことでカバーするようにしています。一緒にいても疲れなくて味覚の合う女性が5人ぐらいいて、互いにスケジュールを合わせながら店を巡っています。
【原田】自分の感覚と、一緒に行く女性の感覚とでWチェックしているんですね。でも僕の場合は、年をとるにつれて若者や女性との“感覚のズレ”が大きくなってきている気がして……。りょうくんは、そうした世代間ギャップや男女間ギャップみたいなものは感じませんか?
【りょうくん】感じたことがないんですよ。実は20代前半からずっと、女性や若者と感覚がズレないように意識してきたんです。年上でも年下でも、年の離れた女性とはまめに連絡をとって、交流が続くように心がけてきました。そうした人たちの感覚を理解できるということを、自分の武器にしようと思って。
【原田】ずっと若者研究していた僕からすると、きっといずれ感覚はずれてきます。ただ、ずれた分、客観的視点は増します。若者たちと協働しながら客観的に分析するスタイルが今後も続けられるときっと強いですよね。
知らない女子大生からダメ出しされるタイプ
【原田】そうした積み重ねが、今は実際に武器になっているわけですからすごいですね。ビジネスの世界にも、若者や女性の感覚を理解したいという人はたくさんいます。どうすればりょうくんのように交流できるのでしょうか。
【りょうくん】これといった方法論はないんですが、僕は女性に怒られやすいタイプみたいです。中学生の頃からずっとそうで、母性からなのか「そんなんじゃダメだよ」ってよく注意されてきたんですよ。今も、SNSで知らない女子大生からタメ口で怒られたりしています。完全に友達感覚で、同い年の友人みたいに接してくれるのでありがたいですね。
【原田】よく言われる「上から目線」はダメで「横から目線」ですね。というか、りょうくんの場合は「下から目線」かもしれませんね。僕のジェネレーションZ研究でも、Z世代は大変自意識が強くなってきているので、「下から目線」が大変重要になってきていると思います。じゃあ男性の場合はどうでしょう。年の離れた人の感覚をつかむために、工夫していることはありますか?
【りょうくん】自分自身が男性なので、感覚は年が離れていても結構わかっちゃいますね。そういう意味ではあまり学ぶことがないというか(笑)。以前、会員制サロンのHIU(堀江貴文イノベーション大学校)に入っていて、そこで幅広い世代の男性の友人ができたので、今は無理に交流を広げなくてもいいかなと思っています。今回の原田さんのように、仕事の場を通じて自然に知り合えるのが理想的ですね。
今はとにかく面白い人に出会いたいと思っています。日々充実しているんですが、その出会いだけが足りない。面白い人と一緒に何かやりたくて、それが有名になりたい理由でもあります。堀江貴文さんのような、自分が無条件に「この人面白い!」と思える相手をずっと探しています。きっとビジネスの世界にいるはずなので、早くそうした人と交流を深められるようになりたいです。
【原田】「りょうくんグルメ」はもはや立派なビジネスの一つになっていますから、その日も近いように思います。お話を聞いて、今の影響力は確かな目標や戦略があったからこそ実現できたのだと感じました。
かつてりょうくんがSNSで紹介したタピオカやチーズドッグは若い女子の間で大ブームになり、今も彼が取り上げたお店にはたちまち行列ができます。彼は今やヒット商品を紹介するのではなく、つくる立場。企業のマーケティング担当者やSNS担当者も、その戦略を参考にしてみてはいかがでしょうか。次回からは、SNSでバズるためのチェックポイントや写真の撮り方、そして「りょうくんグルメ」の今後の展開について聞いていきたいと思います。
撮影=プレジデントウーマン編集部
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。
2018年3月よりSNSで投稿を開始。「まじでこの世の全ての○○好きに教えてあげたいんだが」という定型文が話題になり、1年半後には総フォロワー数が90万人を突破。流行をキャッチし拡散する力が飲食店からも信頼され、現在では新しい「映えるグルメ」の仕掛け人として注目されている。4月1日、著書『まじでこの世の全てのSNSでバズらせたい人に教えてあげたいんだが。』を発売。