学校は給食まででいい
僕はもともと、小中学校は給食までで終わりにすればいいと思っています。テクノロジーを上手に活用することで、「読み・書き・そろばん」は短時間で効率よく習得できます。おそらく半日で十分です。
そして午後は、個人の自主的な興味開発に充てるのです。画一的な時間割なしで、音楽、スポーツ、プログラミング、ビジネスなど、一人ひとりが好きなものを選んでやってみる。学校のようなところでやる子もいれば、畑でやる子、どこかの企業でやる子、オンラインでやる子もいるでしょう。自分の好きなこと、関心のあることを、好きな仲間と一緒に深める活動をするのです。そうすることで、子どもたちそれぞれが、自分の興味や関心、好きなことや得意なことを見つけて深めていけます。
ただ、こうした興味開発を学校教育の中で行うのはとても難しい。なぜなら学校は、国民を一律に教育するために作られた仕組みだからです。一人ひとり個別に対応する必要のある興味開発に適した仕組みではありません。
興味開発を担うのは我々民間になると思いますが、そうすると、「お金がある家の子どもしか興味開発ができない」ということになってしまいます。理想を言えば、国や自治体がバウチャー(利用券)を配り、誰もがそれを使って自分の好きな興味開発の教育サービスを受けられるようになるといいと思っています。
ただそうするにしても、そのバウチャーの財源は教育予算から出すことになるので、既存の保障教育を担う学校と、予算の取り合いになります。そう簡単にはいかないでしょうね。
一斉休校は「時代の大きな転換点」になる
でも、変化は確実に起こっています。例えば、既に学歴の価値は相対的に下がってきています。20世紀は、高い学歴こそが名のある「いい会社」に直結していた。そして「いい会社」は安定、高い給料に繋がっていて、その会社の中で社員は競争し、さらに高いポジションを求めて働いていました。
しかし今はそれよりも、自分に合った働き方や働きがいを求めるようになっています。仕事とは、単に生活の糧を得るためのものではなく、自分の人生を表現する手段に変わっている。または、変えたいと考える人が増えています。
既に、これまでの教育に疑問を持ち、「変えたい」と思う人が増えていたところに、新型コロナ感染拡大の影響で、これまで当たり前のように通っていた学校や塾などが突然休みになり、デジタルなどの代替手段に目を向けた家庭が増えた。「結構いい代替手段もあるから、学校も塾も、別に行かなくてもいいんじゃないか」と、“前向きな不登校”が増えるのではないかと思っています。
2020年の春は、後で振り返ってみると「時代の大きな転換点になった」と感じるようになるでしょうね。
構成=大井明子 撮影=プレジデントウーマン編集部
1981年東京生まれ。3兄弟の長男で、一風変わった家庭教育を実践する父のもと育つ。高校は中退し、大検を取得して京都大学に進学。弟2人も京都大学へ。父から受けた独特な家庭教育とそのノウハウを著した『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)が後に話題となる。2011年「探究学舎」設立。プライベートでは5児の父で、自宅は必ず公園の近くにするというこだわりを持つ。