やってはいけないことは「売ること」と「止めること」
さて、ここからが、こうした下げ相場にどう対応するかということです。これは個別株投資をしている人と、投資信託などの積立投資をしている人で若干異なりますが、どちらにも共通していることは「決して慌てて売ってはいけない」ということです。投資というのは経済行為ですから、冷静に考えてきちんと数字を見て判断しないといけないのですが、一方で投資マインドを大きく左右するのが人間の心理です。相場の上げ下げというのは直接自分のお金が損か得かということに直結しますから、心が揺れ動かされないわけがないのです。
投資を邪魔するもの、それは「欲」と「恐怖」です。上がっている時に冷静な判断を妨げるものは「欲」であり、下がっている時に正しい行動の邪魔をするのが「恐怖」です。今のように下落が続くと、今投資をやっている人は不安でたまらないでしょう。しかしその恐怖におびえて売ってしまうと、必ず失敗します。
例えば確定拠出年金という制度があります。毎月一定額で預金や投資信託を購入する制度です。この制度は2001年から始まっていますが、昨年(2019年)の時点でマイナスになっている人がなんと2.3%、19万人近くもいるのです(※企業年金連合会2019年2月発表の資料より)。2001年当時の日経平均は1万円ぐらいですから、ずっと積立を続けていたのであればほとんどの人はプラスのはずです。にもかかわらずマイナスになっている人がこんなにいるのは一体どうしてでしょう。
暴落時にやってしまいがちな最悪な行為
この理由は簡単です。積立で投資信託を買っていた人がリーマンショックで大きく下がった時に怖くなって売ってしまい、そのお金を定期預金に移して今日まで放ってあるからです。定期預金ではまずほとんどお金は増えませんから、リーマン時に損を確定したものがそのまま今日まで続いているということなのです。その時に何も行動しなかった人はその後株価の回復によって大きな利益を得ることができています。株式市場というものは永遠に上がり続けることもなければ永遠に下がり続けることもありません。仮に下がっても長期保有していれば報われる可能性は大きいのです。したがって、わざわざ安くなった時に売ってしまうというのは最悪の行動と言って良いでしょう。
売るところまでいかなくても嫌になって積立を止めてしまう人もいるでしょうが、これも感心しません。積立投資の良いところは一定の金額で購入することによって値段の高い時は少ししか買わず、安い時にはたくさん買えることです。下がった時に積立を止めてしまったのでは、安い時にたくさん買って平均コストを下げるということができなくなってしまいます。したがって、積立投資をやっている人は、売ったり、積立を止めたりするのではなく、何もせずに淡々と積立を続けること、これに尽きると思います。