感染拡大のピークはそれほど先ではないが……

コロナウイルスは感染症ですから、いつとは断言できませんが、必ず終息する時期がやってきます。いつまでもこのような状態が続くわけではありませんから、それまでは落ち着いて行動するが大事です。

2002年から2003年にかけてアジアを中心に感染が拡大したSARS(重症急性呼吸器症候群)の時には、WHO(世界保健機関)が完全収束を宣言するまで8カ月を要しましたが、現実には、5カ月程度で一般的な経済活動は元に戻っていました。今回はSARSよりも規模が大きいので楽観は禁物ですが、感染拡大が本格化してから3カ月が経過しようとしています。ピークはそれほど先ではないかもしれません。

政府が学校に対して休校要請を行ったということは、人がたくさん集まるところにはできるだけ行かない方がよいということを意味しています。会社や学校が休みになったことで、外出を考えている人もいるようですが、人混みは避け、可能な限り、家の中で楽しむ事を心がけた方よいでしょう。あまり知られていませんが、激しいスポーツをすることは感染リスクを拡大させます。しばらくの間は、無理に体を動かすことも控えた方が賢明です。

終息後も続く厳しい家計のリアル

感染が終息すれば、とりあえず経済は元の状態に戻ることになりますが、感染終息後についても楽観は禁物です。日本の場合、もともと消費が低迷している中で消費増税が行われ、経済が疲弊した状況にコロナウイルスの感染が重なりました。オリンピック関連の特需もすでに昨年の後半で消滅していますから、2020年の景気は良くなる要素が見当たりません。

加えて今年(2020年)の4月1日から、働き方改革による残業規制が中小企業にも適用されます。企業によっては一律に残業をカットする可能性がありますから、中小企業で働いている会社員の場合、今年の年収は大幅ダウンとなるかもしれません。大企業はすでに19年4月から実施済みですが、一部の社員は出費計画の大幅な見直しを迫られています。

中小企業に勤務している人は、今年の残業代がどうなるのか、ある程度見通しを立てておいた方がよいでしょう。景気が悪くなる可能性が高いという現実を考えると、夏と冬のボーナスも低めに見ておいた方が無難です。コロナウイルスの拡大で不安な気持ちが高まる中、気の滅入る話で申し訳ありませんが、これが偽らざる現実です。ウイルスの感染が終息した後も、今年は大きな支出を控え、節約モードを徹底した方がよいと筆者は考えます。

もちろん、防戦一方ではいけませんから、感染拡大を逆手に取った攻めの姿勢も必要です。遠隔で業務ができる副業への取り組みなど、収入アップと非常時対策を兼ねたチャレンジをしてみるのも良いでしょう。中長期的には、今回の感染拡大をきっかけに、リモートワークなどITを使った業務が加速すると予想する専門家も少なくありません。家にこもっている時間を利用して、ITスキルを磨いておくのもひとつの考え方です。

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加谷 珪一(かや・けいいち)
経済評論家

1969年宮城県生まれ。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後独立。中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。