“おじさんくさいコスメ紹介”がなぜか人気

【原田】確かに、Twitterは愚痴や文句をつぶやく人も多いよね。そこに、堂々とポジティブなツイートをする人がいると、応援したくなるのもわかる気がするよ。ほかに「〜系」と言えそうなインフルエンサーはいるかな?

「おじさんキャラでコスメを紹介する謎の人物が“高田智弘”が気になる」長谷川さん。
「おじさんキャラでコスメを紹介する謎の人物が“高田智弘”が気になる」長谷川さん。

【長谷川さん】「なりきり系」と言えそうなのが「高田智弘」さん。ほぼ毎日、自分が使ったコスメを紹介しているんですが、文章や写真がすごくおじさんっぽいんですよ。芸能人とか女の子に半角で「チャン」ってつけたり、写真に影が映り込んでいたりフィルターを使っていなかったり……。でも正体はまったくの謎。私は、女性か女装好きの人があえておじさんに成りきっているんじゃないかと思っています。

【須藤さん】その人私も知ってる! 確かに面白いんだけど、フォロワーが2万7000人もいなかったらあやしくてフォローしないよね。

【長谷川さん】それはそうかも。ツイートだけ見たらただのおじさんだから(笑)。あと「イエローベースの孫悟空」さんも面白いです。コスメをすごく詳しく紹介してくれるんですが、語り口調が全部『ドラゴンボール』の孫悟空。笑えるうえにコスメ情報としても役に立つので、よくチェックしています。

斬新すぎる生き方を提案

【八巻くん】「生き方系」としては「プロ奢ラレヤー」さんが話題です。「他人のカネで生きていく」をモットーに、他人に奢られて生きているので、それ自体がネタとして面白い。彼の投稿を見て実際に奢る人も増えていて、ダルビッシュ有さんも「奢りたい」ってツイートしていました。特徴的なのは、奢ってくれた人のことも話題にして、相手の知名度アップに貢献していること。縛られない生き方にも憧れます。

【森くん】SNS上で出会った他人を推すっていいですよね。漫画情報サイトを運営している「けんすう」さんもその一人。自分の好きな作品を見つけると、クラウドファンディングを募って広めようとするんです。その過程もツイートしてくれるので、他人を応援する行動が可視化されている。応援行動の最先端として人気が集まっています。

【原田】なりきり系は、相手のリアルな姿が見えないSNSならではの楽しみかたと言えそうだね。生き方系も面白い。「プロ奢ラレヤー」さんは、働き方が多様化している今、若者の憧れの一つにもなりそうだと思ったよ。また、応援行動が人気を集めているのも意外だったな。誰かを応援したくても方法がわからない、そんな若者たちのいい手引きになりそうだね。

今回の座談会では、若者たちが「SNSで成功していると思う人」の例として14ものアカウントが挙がりました。見ていて面白い人だけでなく、親しみや共感を覚える人、応援したくなる人などが支持を集めているようです。ここから考えると、今の若者たちはSNSをただ第三者的に眺めているだけではないように思えます。真似できる部分がある、感情を動かしてくれる、一緒に盛り上がれる、そんな対象を求めているのかもしれません。ただ、こうした対象は移り変わりも早いもの。その変遷に、今後も注目していきたいと思います。

写真=iStock.com

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。