知らない人とは交流しない若者が多数派
【原田】ストーリーズ広告は大人はあまり見ないと思うんだけど、女子高生の間では情報ソースにもなっているんだね。それと、整形が美容情報の一つとして受け入れられているのも驚きだったよ。じゃあ次は、面識のない人との交流について。SNSで知らない人とやりとりすることはあるのかな。
【八巻くん】SNSで知らない人とやりとりすることはほとんどありませんが、スマホゲームアプリの「荒野行動」ではあります。知らない人と喋りながらプレーできるので、時々オフ会も開かれたりしているみたいです。
【森くん】僕みたいな地方大生だと、例えば映画を創りたい時に人が集まらないことも多いんですよ。そんな時、SNS上でその分野の有名人にDMを送って、共同制作の相談をしたりアドバイスを求めたりしています。以前は趣味のグッズを売買したり、マイナー映画を一緒に見に行ってくれる人を募集したりもしていました。
【宮本さん】私は、基本的に知らない人とはやりとりしません。インスタでは美容師さんから売り込みのDMが来ることも多いけど、返信することはないですね。
【丹羽さん】私も基本的にはしませんが、マッチングアプリ「Tinder」は使ったことがあります。リアルのコミュニティー内だと恋愛するにも周囲に気を使うけど、Tinderで会う人とはそういうしがらみがないから。あと、Twitterでは「#春から早稲田」のハッシュタグをきっかけに、面識のない早稲田大生と交流するようになりました。
【須藤さん】私も、面識のない人とのやりとりはメルカリの取引画面、インスタライブに送るメッセージ、YouTubeのコメント欄、SNSのDMぐらいですね。その際は相手を不快な気持ちにさせない、顔文字を使いすぎない、冷たく見えないようになど、自分なりに心がけています。
【長谷川さん】私はほとんどしたことがないですが、友達には趣味垢やマッチングアプリでならやりとりするという人もいます。
【赤峰沙枝さん】私も、趣味垢なら共通の趣味があるので、面識のない人とも気軽にやりとりしています。でもリア垢では、友達以外とつながることはほとんどありません。
企業発の情報より個人発の情報を重視
【原田】皆、意外に慎重なんだね。もっと気軽に知らない人とやりとりしているのかと思ったよ。その点で、森くんの使い方はSNSならではの長所をうまく生かしているね。ただ、趣味垢がある人を除けば、多くの若者はSNSを友達との交流や情報収集のために使っているようだね。
SNSは基本的に交流ツールとして発展してきましたが、今の若者は交流の輪を広げることにはそれほど熱心ではないようです。一方、情報収集ツールとしては大いに活用している様子。企業がPRのために発信している情報やニュースサイトよりも、芸能人や一般人による「個人的な体験」を綴った情報のほうが信頼できるという意見も出ました。前者には何らかのバイアスがかかっていると感じているのかもしれません。若者が情報ソースを選ぶ基準は、リアルさや信頼性が感じられるかどうか、そしてほしい情報が探しやすいかどうかにあると言えそうです。
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1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。