介護保険料大幅アップの本当の理由

今回の介護保険料の大幅アップの背景にあるのは、突然に介護保険利用者が増えて、介護費用が増加したとかではなく(確かに増え続けてはいるのですが……)、第2号被保険者間での「負担の仕方」の変更によるものです。

ごく大ざっぱな説明をしますと、従来は「第2号被保険者」の保険料は、その頭数で割ることで決定されていました。ところが、この場合だと、所得の低い人の負担が高い人に比べて相対的に重くなることが指摘されており、これを是正するのに、第2号被保険者の中でも「被用者保険(健康保険組合、協会けんぽ、共済組合)」といわれるところにおいては、所得水準を考慮して負担を分担するようになります。これを「総報酬割」といいます。

実は、この改正はすでに2017年度から段階的に始まっていて、2020年度で完全導入となります。そのため、中小企業よりも所得が高めである大企業の健康保険組合では保険料率がアップすることになるのです。

ただし、健康保険組合といってもすべてが引き上げられるわけではありません。そもそも加入する健康保険組合等により介護保険料率は異なるため、今回の改正の影響もそれぞれ、ということになります。

とりあえず、毎月の給与明細の「控除」欄を見れば、ご自身が毎月いくらの介護保険料を納めているのかはすぐに確認できます。具体的な料率を知りたい場合は、ご自身の健康保険証に明記されている「保険者」に直接問い合わせるか、勤務先の担当部署に聞いてみるといいでしょう。

今回の保険料アップの背景にあるのは制度変更に伴うものであったとしても、介護保険全体を見渡してみれば、介護費用が年々増え続けている事実は変わらず存在します。となれば気になるのは、さらに高齢化は進みますから、今後ますます私たちの負担は増えてしまうのか、でしょう。

75歳以上人口は2倍弱なのに、介護費用2.8倍の謎

結論からいいますと、それはいまの私たちにかかっているのではないか、と思うのです。

厚生労働省の介護費用データの推移をみると、制度が開始された2000年度は総額3兆6000億円でした。10年後の2010年度では2倍以上の7兆8000億円にまで膨らみ、直近の2017年度は10兆2000億円と当初のおよそ2.8倍にまで増え続けています。

一方で、高齢者の人口推移をみてみると、少し違った推移がみえてきます。

介護保険の利用者の大半は75歳以上なので、75歳以上の人口でみてみます。2000年の75歳以上の人口を「1」とすると、2010年は1.564、2017年は1.943です(いずれも国立社会保障・人口問題研究所の人口統計より試算)。

75歳以上の高齢者数は、2000年比で2倍程度の増加に対し、介護費用全体はそれを上回る3倍近くにまで膨れ上がっています。つまり、一人あたりの介護費用が増えている実態がみえてきます。

介護費用と人口