人々の意識が変わり始め、行動に反映されるようになった

——今や一大トレンド、そしてビジネスにもなっているサステナビリティだが、キャサリンさんが声を上げ始めた当時はほとんどの人が興味を示さなかったという。では、人々の意識が変わったと思った瞬間は?

【K】2006年に変化が生まれました。消費者の意識が高まり、購入行動に反映されるようになったのです。

——サステナブルは、今ひとつのキーワードになって世界中を席巻している。それをもっとも強調しているのがファッション業界だ。30年間この世界を牽引してきたキャサリンさんは、自身が身を置く業界が抱えている課題のひとつを具体的にこう話す。

【K】すべての素材やプロセス、特に従来の綿農業の社会的・環境的な影響や、エネルギーから輸送に至るまでの二酸化炭素排出が大きな課題だと考えています。

——ファッション業界を内側から変えようとしたキャサリンさんの長きにわたる活動が、今こうして一大ムーブメントとなっているのはすでに私たちが知るところだ。それどころか、サステナビリティへの取り組み自体がひとつの企業ステイタスにまでなっているということは、もはや無視できない現状なのだ。

苦労したのは女性としてではなく、パイオニアとして

——サステナビリティの草分け、そしてファッションデザイナーとして第一線で活躍してきたキャサリンさんに、今度は女性リーダーとしてのあり方を聞いてみた。彼女から見て、プレジデント ウーマン読者のような、責任のある立場の女性たちが環境問題についてすべきこととは?

【K】自身と家族のために、可能な限りサステナブルなものを買うこと。原料や工程の良しあしを確認し、それに応じて買い物をすること。

——すべての人が当たり前にサステナビリティに貢献するために、日頃から気をつけること、そして自身が長い間、ファッション業界そしてサステナビリティ両方の世界において第一線で活躍できる、そのパワーの源とは?

【K】私たちの消費のあり方がこの星の未来を決めるということを自覚することだわ。

私は、とても心配なのです。私はこの世界と生き物すべてを愛しています。そしてそれらが破壊されるのを見たくはありません。

——女性リーダーとして大変だったこと、苦労したことはあったのだろうか?

【K】女性として、というとノーですが、サステナビリティのパイオニアとしてはイエスです。実際に唾を吐きかけられたことすらあります。

——世界的に有名なファッションデザイナー。そんな華々しい活躍の裏でも、多くの人をリードする立場の人には人知れず苦悩と、そして想像すらできないほどの挫折が隠されている。それでも揺るぎない信念を通して、自分と周りの大切な人のために正しい道と良質なものを選ぶ。そんなシンプルな行動が、結果的にリーダーとしてより多くの人に影響をおよぼすともいえるのだ。

2019年10月、東京・表参道で行われたブランド創立40周年パーティの様子
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