アナロジーとは「類推」「類比」を意味し、情報を理解しやすくするために他の物事になぞらえることを指す。例えば、「買い物ができるカフェ」がアイデアだった場合、その構成要素である「めずらしい食材が買える」「ナチュラル」などを手掛かりにほかの物事に例えてみる。その結果、「市場」という例えが見つかったとしよう。次は、この例えを起点にして「市場のようなカフェとは?」という具合に考えてみる。こうすることで、アイデアに幅や奥行きが生まれ、より具体的で独創的になる。

あとはもう、アイデアをビジュアルに落とし込むだけ。妄想を1度で伝えるには、3つの要素が必須となる。それは、本質を端的に表すネーミング、魅力が伝わる短いフレーズ、そして受け手の理解を引き上げる例を含んだ視覚的要素だ。実際にこの「ビジョンポスター」を人に見せるときには、「これは◯◯のような××です」と説明すると、受け手側に伝わりやすい。

Point
●A3の紙を用意する(PCなどのデバイスの力を借りてもよい)
●アナロジーを入れて考えてみる
●ネーミング、キャッチコピー、キービジュアルを盛り込む

Step4 表現する

アイデアをアウトプットする場を意識的に設け、外部と情報を共有することで独自の視点に磨きをかけよう。

作品を発表する場を決めてモチベーションをアップ

「表現する」をビジョン思考の最終ステップとしているが、妄想・知覚・組替・表現はあくまでもサイクルであり、終点であると同時に起点でもある。だから、自分のアイデアをビジョンポスターに落とし込むことができたら、まずは信頼できる友人などにそれを見せてみよう。このとき大事なのは、ポジティブな意見をもらうこと。ここで全否定されてしまうと、せっかくのエネルギーがそがれかねない。アイデアの個性を理解し、いいところを認めてもらったうえで、もっと良くなる、よく見えるための助言を求めよう。

そして最後に表現の仕方を決める。発表方法は展示会でもFacebookでもなんでもOK。アイデアの規模に応じて最善と思える手段を選択すればいい。だれに、いつ、どこで発表するか、表現の場を決めるとモチベーションもアップ。アイデアをさらに磨き上げるきっかけになるので、ある程度ビジョンが形になったら臆することなく発表してほしい。

Point
●考えたアイデアを第三者に見せ、ポジティブな意見をもらう
●「だれに」「いつ」「どこで」発表するかを決める

構成=福田彩 撮影=平松唯加子 イラスト=上坂じゅりこ

佐宗 邦威(さそう・くにたけ)
戦略デザインファームBIOTOPE代表

東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科修士課程修了。P&G、ソニーを経て独立。著書に『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディア・パブリッシング)、『直感と論理をつなぐ思考法』(ダイヤモンド社)、『ひとりの妄想で未来は変わる』(日経BP)などがある。多摩美術大学特別准教授/大学院大学至善館特任准教授。