人は簡単に買い物の鉄則を忘れてしまう
一般的に買い物の鉄則は、「良いか、悪いか」で考えるのではなく「必要か、不要か」で考えるべきだということがよく言われます。これはたしかにその通りで、「買おうかな」という意欲が出てきた時点で、「良い」と思っているからそう考えるわけです。したがって、「良いか、悪いか」で考えれば、“買った方が良い”に決まっているのです。冷静に考えるためにはその品物を買うことが必要かどうかで考えるべきなのですが、残念ながら、そこまで冷静に考えることができないのが普通の人間です。だからこそ、衝動買いが起きてしまうのです。特に家電製品や高額の商品などについては、ボーナス時期は警戒が必要です。
そこで今回は、ある心理的な現象を使って買い物の判断を慎重にすることができるという方法をお話します。その心理的現象とは「メンタル・アカウンティング(心の会計)」といわれるもので、以前このコラムでも説明しました(「普通の会社員がお金持ちになる唯一の方法」)。
本来、お金に関する収支の計算というものはトータルで考えていかなければ意味がありません。ところが人間は、心の中で勝手に会計勘定を作って利用目的別にお金を仕訳してしまうという傾向を持っています。例えば消費目的の勘定から支出するお金についてはあまり抵抗なく使ってしまうのに対して、資産形成を目的とする勘定から消費のためにお金を出すということについては大きな抵抗感を感じるのです。
“大きな買い物”に抵抗がなくなる理由
ちょっと具体的な例で考えてみましょう。普通、サラリーマン家庭が何か大きな買い物をするのは一体どんな時でしょうか。まとまったお金が入った時、例えば定期預金の満期やボーナスをもらった時でしょうね。長年使っていた冷蔵庫やテレビもそろそろ買い替えを検討するようになってきたとします。
ところが、壊れて使えなくなってしまったのでなければ、すぐに買うというケースはあまり多くないように思います。「ボーナスが出るまであと少しだからそれまで待った方がいいんじゃない?」という会話が交わされることが多いでしょう。逆に言えば、“ボーナスで大きなものを買う”というのは夫婦間でコンセンサスができていることなので、多くの家庭では割と抵抗なく実行することができます。この場合のメンタル・アカウンティングは、ボーナスというキャッシュを消費勘定と貯蓄勘定に分け、消費勘定から支出をすることになるのです。