10分のスピーチのためにボストンへ

この経験の5年後に、私はたった10分のスピーチをするために、アメリカのボストンに呼ばれたことがあったのですが、ひとつの迷いなく「はい、行きます!」と答えることができました。

このつながりの元となったのは、書くことがなくて困って書いた「ネットサーフィンをした」なんていうささやかなチャンスです。この時にネットサーフィンをして趣味を探さなかったら、私は10分のスピーチのためにボストンに行くなんていう決断はできなかったと思います。

まさか、そんなチャンスが、こんな風につながるなんて思いもしませんでした。

チャンスは「その時」見える価値だけでなく、「つながった先」に新たな価値が見えてきます。あなたもノートにチャンスを書いていると、「あれ? このチャンスがこんな風につながるんだ!」と何度も発見すると思います。

そのつながりを見ていくと徐々に「今見える価値」だけでなく、「その先の価値」を想像できるようになってきます。そうすると、チャンスを見抜く目はより鋭くなり、より戦略的に行動できるようになるとわかったのです。

驚くほど多くの人からチャンスをもらっている

ノートを見返して、チャンスのつながりに線を引く効果は、それだけではありませんでした。

書きためたノートのいくつものつながりを見ていくと、無数の小さなチャンスに支えられて、今があることが心底実感できて、感謝の気持ちが溢れてきました。

実際に毎日ノートを書いて見返すと、驚くほど多くの人からチャンスを受け取っていることに気がつくでしょう。

・桜井さんから、素敵な人を紹介してもらった。
・渡部さんが、面白いイベントに誘ってくれた。
・田中さんが、声がいいねとプレゼンを褒めてくれた。
・ひのさんが、ランチに誘ってくれた。
・小川ちゃんと、本音で話しあえて嬉しかった。

1個1個書いている「その時」は、そこまで大したチャンスではないと思っていたかもしれません。でも蓄積されて「つながり」が見えてくると多くの人からもらったチャンスのおかげで、今があるとしみじみと実感できます。

そして、「つながった先」をみると、1つ1つのチャンスのどれもが自分にとって大切で、愛おしいものだったのだとわかります。「あぁ、この時、桜井さんに紹介してもらったから、次につながったんだなぁ」「田中さんに声を褒めてもらったことが、今でもプレゼン前の心の支えになってるな」というようにチャンスのつながりを自分の目で確かめることができるのです。

ノートを見返すと、幸せな気持ちになれるのは、この「つながり」が見えてくるからなのです。ノートには毎日のチャンスを記録していきますが、その記録はあなたの幸福リストでもあるのです。

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山田 智恵(やまだ・ともえ)
株式会社ダイジョーブ CEO ミーニング・ノート発案者

リーマンショックの影響で、勤めていた父親の会社が民事再生を申請し、一家全員無職となる。32歳で初の就職活動を行うなど、ゼロから人生を切り開かなくてはならず、チャンスをつかむために「ミーニング・ノート」を始める。そこから人生が好転し、転職した一部上場企業ではたった1年で部長に昇格し、外資系スタートアップ企業にも社外取締役として参画する。2016年に株式会社ダイジョーブを設立。ミーニング・ノートを広める活動を行なっている。また、組織の意思決定の場に女性が少ないことを課題に感じて、女性管理職のためのコミュニティ「Women@RoundTable」を運営している。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)卒。