男は女より競争好きなのか

この仮説によれば、男性の方が、女性よりも競争に参加すること自体が好きだったり、競争でより実力を発揮できたりすることが、昇進競争での勝者の数の男女差につながる。このような競争に対する男女の嗜好の差がそもそも存在しているのか、存在しているとすればそれは生まれつきの差なのか、教育や文化によって形成されるものなのだろうか。

競争的報酬の生産性上昇効果や競争的環境についての好みについては、コンピュータ上で迷路や足し算などの問題を学生に解かせ、その正解に応じて報酬を支払う実験を行って研究することが多い。ある研究者たちは報酬の支払い方法が出来高給のグループとトーナメント制による報酬のグループの2つを作り、その報酬形態による成績の差を男女で比較した。出来高給は、本人の正解数だけで報酬が決まり、トーナメント制はグループの中で一番の時だけ高い報酬がもらえるものである。その結果、女性の成績はどちらのグループでも同じであるのに対し、男性はトーナメント制の方でよりよい成績をあげることが示された。

男性は女性より自信過剰

競争環境下での成績には、子どもの頃から男女差があるという研究もある。9歳から10歳の子どもたちに徒競走させるという実験だ。子どもたちは、最初に1人で走り、次にペアで走り、それぞれの場合で時間を計測する。女子は1人で走っても、2人で走ってもかかった時間に変化はなかったが、男子は1人で走るよりも競走して走った時の方が速く走ることができるという結果が得られている。

競争的な報酬制度への選好そのものに男女差があるかもしれない。このことを調べた有名な研究では、2桁の数字5つの足し算を5分という制限時間内でできるだけ多く解いてもらう課題を実験参加者にさせた。最初に、参加者には、出来高制とトーナメント制の両方の報酬体系のもとで作業をしてもらう。その上で、もう一度、どちらかの報酬体系を選んで、作業をしてもらう。

この方法で、競争への選好を分析した。この実験の結果は、男性の方が女性よりも競争(出来高払いよりもトーナメント制)が好きであり、男性の方が女性よりも自信過剰であることを示している。日本で行われた実験結果も、アメリカをはじめ先進国で行われた実験とほぼ同じ結論を示している。