年金分割より、自身の年金を増やそう
とはいえ、お金のために離婚しないというのは考えもの。年金を分割する側から考えれば、離婚するなら離婚時期が早い方が分割の対象となる額を抑えることができる。
また相手が3号で、「いずれ離婚になるかも…」という場合は、相手に婚姻中に働くことを勧める、というのも得策だ。相手が厚生年金に加入して2号被保険者になれば、合意なしの分割ではなく、分割には両者の合意が必要になり、話し合いに持ち込むことができる。
逆に、自身が3号被保険者で、相手が会社員など、分割してもらう側ならどうだろう。その場合、3号の状態をキープして3号分割制度を利用するという考え方もある。ただし、離婚まで長期戦になる場合や、年齢が若い人が離婚する場合は、早くから働いて厚生年金に加入した方が、自身の年金を増やすことに繋がり、有利になる場合もある。離婚すれば働くのが一般的で、それなら年金分割にしがみつかずに、早くから経済的自立を目指した方がポジティブでいいかもしれない。
また分割した分の年金が受け取れるのは、自分の年金を受け取り始めるとき。まだまだ先のことであり、離婚後の当面の生活資金としてあてにすることはできない。
いずれか一方が年金事務所に相談すれば、分割の対象となる額を試算してもらえるので、離婚が頭をかすめたら、試算を依頼してみるのもいい。額が分かれば具体的な作戦も立てやすいかも。
相手が3号(専業主夫や専業主婦)であれば2分の1は分割、会社員同士なら多い側が少ない側に合意があれば分割、ということを覚えておこう。
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関西大学卒業。社会保険労務士。国民年金基金連合会理事。『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください 増補改訂版』(日経BP)、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)、『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)など著書多数。