記憶に新しい中国人女優の巨額脱税事件

2018年には、中国で有名女優の巨額脱税事件が起こりました。中国芸能界長者番付1位(2017年。約40億円)の超人気女優で、日本でもCMに出演し、ブルース・ウィリスとの映画共演の話もあった范冰冰(ファン・ビンビン)が、なんと1億4千万元(約23億円)もの脱税があったと、国税当局から指摘されたのです。彼女は、その後支払いに応じましたが、追徴課税はこれまた信じられない金額で、何と8億8千万元(145億6千万円)でした。彼女はそれを払いきり芸能界に復帰してきましたが、スケールが大きすぎてついていけません。

4億円脱税で有名になったFX主婦

また最近はFXがらみの脱税が非常に多いようです。兵庫県の33歳市役所職員女性が起こした7億円超の申告漏れ、東京の主婦が起こした4憶円の申告漏れは、どちらもFXの所得隠しです。ちなみに後者の申告漏れを起こした池辺雪子さんは、事件後『あの4億円脱税主婦が教えるFXの奥義』という指南書を扶桑社から出版しています。タフですね~。

しかし、皆さんも気をつけてくださいね。FXの脱税は、基本バレます。FX会社のほうが、支払調書で税務署に顧客データを渡しているためです。そこから探れば、顧客が確定申告しているかどうかも当然バレてしまいます。そしてバレたら告発され、本来の税額に加え、延滞税・無申告加算税・悪質な所得隠しへの重加算税などで、相当きついペナルティが待っています。会社員の皆さんはFXでの年収が20万円以上、専業主婦の人は年38万円以上になったら、必ず確定申告して所得税を払いましょう。ちなみに専業主婦がFX収入で確定申告した場合、配偶者控除はなくなります。

脱税を詳しく知るなら『マルサの女』

そして、女性と脱税といえば忘れられないのが、映画『マルサの女』(配給:東宝)です。

港町税務署の調査官だった板倉亮子(宮本信子)が国税局査察部の査察官(マルサ)に任命され、津川雅彦演じる統括官の下、実業家の権藤(山崎努)や宗教法人の鬼沢(三國連太郎)らいかにもな巨悪と立ち向かう伊丹十三監督の痛快娯楽査察映画(?)です。バブル期の日本人の醜さが、コミカルかつテンポよく、ドライブ感あふれるストーリー展開の中で示され、本当におもしろいです。個人的には、愛人のことを「特殊関係人」と言っていたのが、とても印象的でした。

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蔭山 克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師

「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。