いまいちばん安全な防腐剤・パラベン

たしかにパラベンは人工的に合成された添加物です。しかし現在では、ラット検証や人体検証も含めた研究により、パラベンはもっとも低刺激ですぐれた防腐効果を持つ安全性の高い成分としてのエビデンスがとれています。

おそらく、この「パラベン=肌の害になる」というイメージは、パラベンが以前、表示成分のひとつであったことが原因のようです。

落合博子『美容常識の9割はウソ』(PHP研究所)

パラベンは30年以上前に当時の厚生省がつくった「アレルギー反応を起こす可能性のある表示成分」のリストに含まれていました。

ただ、先述したとおり、この旧表示指定成分の内容は古く、当時危険とされた成分のなかには、現在は健康食品としてサプリメントで販売されているものさえあるほど。

ですから、「パラベン=危険」の認識はあらためる必要があります。

安全性が保証されなければ、現在は許可が出ませんし、そもそも食品に使えるはずはありません。

パラベンやメチルパラベンは、防腐剤としてもっとも刺激がなく安全なものといえますから、悪者あつかいする必要はないのです。

「防腐剤フリー」は基本あり得ない

では、最近多々見かける「パラベン不使用」商品についてですが、パラベンが使われていないということは、当然ながらほかの防腐剤が配合されているはずです。

そもそも化粧品として販売許可を得るためには、「未開封で3年間保存が可能」という条件をクリアする必要があります。

防腐剤の配合なしに、この条件をクリアすることはほぼ不可能ですから、たいていの化粧品には、防腐剤もしくは、それに代わる成分が添加されているでしょう。

ただし、もし防腐剤が本当に無添加で3年保存の条件をクリアできない場合、「消費期限を化粧品の目立つところに記載すること」で販売の許可を得られます。

つまり、本当に防腐剤不使用の化粧品には、かならず消費期限が明記されているはずです。防腐剤がどうしても気になる方や、パラベンにアレルギーが出てしまう方は、こうした消費期限つきの製品を使うのがよいでしょう。

成分にリスクはつきもの

ただ、注記しておきたいのは、どの成分にもアレルギー反応が出てしまうリスクはあるということ。パラベンはかなり低刺激で安全性が高い成分ですが、それでもアレルギーを引き起こす可能性がゼロだとはいえません。大部分の人にとって大丈夫であっても、ある人にとっては合わない可能性もあるのです。

しかし、これはどの成分にもいえること。何かの作用があるということは、かならず副作用もあります。成分にはいつもメリットとデメリットの二面性があるものだからです。

そうした二面性を考慮してもなお、パラベンはリスクがかなり低く安全な防腐剤であると位置づけることができます。

写真=iStock.com

落合 博子(おちあい・ひろこ)
国立病院機構東京医療センター形成外科医長、再生医療研究室室長、日本抗加齢医学会専門医

1991年東北大学医学部を卒業。医師免許取得後、形成外科、創傷外科の専門医としての勤務を経て、2003年より国立病院機構東京医療センターで形成外科医長を務める。