世界で通用するホスピタリティを学べる
三つ目は「ローザンヌ・ホテル学校」です。1893年に設立され、世界で初めてのホテルマネジメント学校。現在は、フランス語部と英語部があり、約2000人の学生がいます。いわゆる専門大学ですが、卒業すると学士号が得られます。学校外での実習は2度、6カ月ずつあり、修士課程もあります。普段学校内では、学生は、男子は背広、女子はスーツの制服が義務付けられています。ここはホテルマンになるだけの教育ではなく、世界のエリートたちを育成するプログラムです。
ホスピタリティ・マネジメント学科という学科を聞いたことはありますか。ホスピタリティとはお互いを思いやり、手厚くもてなすことを意味し、ホテルや飲食店、旅行業などのサービス産業にかかせない大切な精神です。社員管理能力等サービス産業でトップに立つために必要とされる能力を身に付ける学科でもあります。この学科で世界一に輝くのが「ローザンヌ・ホテル学校」なのです。同じ学科で、二位、三位ともに学校はスイスに存在します。
ローザンヌ・ホテル学校で学ぶ場合、一年のカリュキュラムで約1000万円かかり、さらに全寮制なので莫大な金額が必要となります。ホテル王のご子息たちが修行し、裕福なお嬢様たちが社交界で活躍する土台を作るためにホスピタリティを学ぶのです。また、国の政情不安を逃れるためにアラブの石油王たちの子息が送り込まれることも多いそうです。
これらの学校では学問を学ぶだけでなく、世界中に最強のコネクションを手に入れることができます。その名簿は一生の宝ものとなり、強い味方になるでしょう。どれだけ素晴らしい友人たちを手に入れるかで、人生のクオリティは大きく変化しますから。
子供だけ国際人にしようとしても意味がない
日本でも、子供にはグローバルマインドを身に付けさせ、言葉も数カ国語話せるようなインターナショナルな人になってもらいたいと考え、そのために海外の学校や国内のインターナショナルスクールに通わせたいという親は多いです。子供向けの留学紹介をしていたのでさまざまなケースを見てきたのですが、驚かされるのは、親は子供に夢を託すだけで自分の成長は考えてないというケースが少なくないこと。英語も話さないような方が多く、私のような通訳者が入れば入学まで問題はないのですが、留学した後何が起こるかまったくイメージされていないのです。
以前私は、フランスのコートダジュールの山側にある幼稚園と小学校を、日本人に向けてPRしていたことがあります。残念ながら経営者が他界されたことで現在休校になっていますが、学校が山を買い取り、動物、植物、昆虫など自然に触れるプログラムが充実している学校でした。子供たちは動物の世話をしたり、畑を耕したり、乗馬レッスンがあったり、牛の乳搾りをしたり……もちろん座学の勉強のカリキュラムもバラエティに富んでいました。現代人に失われがちな、人とのコミュニケーションを大切にしている学校で、食事は畑で採れた野菜を中心に、オーガニック料理を全員でいただきます。この学校には、モナコ公国の後継候補のひとりも通われていました。
ある夏、サマーコースに親子で参加されていたグループのアテンドをしました。月曜から金曜日は子供たちは学校の寄宿舎に入ります。平日は子供の面倒を見る必要がない親達に向けて、語学のレッスンなどオプショナルコースがあるのですが、参加される親はわずか数人だけ。それ以外は、自由な時間を楽しんだり、ブランド店や高級料理店でランチやディナーざんまいといった次第です。帰国した際、「モナコ公国の○○店へ行ってきた」という話題が親達のコミュティーでは重要なことなのでしょう。その間子供は、外国人と接しながら、片言の言葉を使ったり、身振り言語で会話をする知恵をつけはじめます。「私はインターナショナルになれないので、子供だけ成長すれば十分です」とおっしゃるお母様が多いことに驚かされました。親の夢やエゴだけで子供の進路や教育方針を決めることは危険です。そのうち親と子のコミュニケーションは取りづらくなるでしょう。子供に大きな成長を望むなら、親も一緒に成長しなければならないはずです。子供だけに夢を託すのではなく、親も努力をする姿を魅せることを心がけてほしいものです。
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モナコ公国に活動拠点をおく国際マナー研究家。2003年、日本人女性にプロトコールマナーを伝えるスクール「エコール ド プロトコール モナコ」を設立。日本と欧州の文化活動や社会貢献活動の功績に対して、王家騎士団“聖マウリッツオ・ラザロ騎士団”から2016年、Dame(ディム)の称号を得る。モナコ公国アルベール大公が名誉顧問総裁を務める国連提携慈善団体Amitié Sans Frontières Internationale(国境なき友好団)の日本支部代表理事。著書に『ドレスを1枚ぶらさげて』など。