増税後のほうがおトク価格に

現実にそういう流れになりました。

商品の価格データを収集している価格ドットコムによれば、増税直前の3月末と増税後の4月20日における家電10品目92機種の平均価格は、4月20日の方が安かったそうです。

こう見ると、「消費税が上がる前に買わなきゃ!」と焦って購入した人は、むしろガッカリしたのではないでしょうか。

もちろん駆け込み購入がおトクな商品もあったのは確かで、たとえば通学定期など値引きのない商品、前払いの英会話やエステ、雑誌の定期購読など年間契約ができるもの、チケットの回数券、化粧品など、既に支出が決まっていて、原則として値引きが少ない商品、モデルチェンジが頻繁でない商品にはメリットがあります。

しかしほとんどの商品の価格は、需要と供給で決まります。

だから売り手の立場も想像できる富裕層は(彼らもビジネスでは売り手ですから)、そうなる流れを無意識的に予見し、駆け込み消費に走らなかったのだと推測しています。

10月以降の販促戦略に注目

そして今回の増税で駆け込み消費があまり盛り上がらないのは、そうした前回の増税時の現象を、消費者が賢く学んだということでしょう。

また、2%と前回よりも上げ幅が小さいうえ、軽減税率の適用やプレミアム商品券の配布、自動車税及び自動車取得税の改正など消費落ち込み対策がセットで打ち出されている点、増税前に買った方が良い商品群についての情報が行き渡っていることも理由として挙げられると思います。

あるいは、「○○ペイ」といったキャッシュレス決済サービスを使えば増税後にポイント還元されるとか、タイミング的にも前回のような新生活のために何かを買い揃える動機が薄い時期だという側面もあるかもしれません。

いずれにしても、あと数週間や数日の2%でトクする金額は知れています。増税の対応にあくせくするよりも、増税後の政府・企業の販促戦略をうまく活用しつつ、手持ちのお金を何に使えばより人生がおもしろくなるかを考えたいものです。

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午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士

1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。