消費税増税よりもっと重要なことがある

それはなぜなのかを考えてみると、ビジネスをしていれば支払う消費税が増える一方、受け取る消費税も増えるなど消費税がかかるのは当たり前で、増税だからといって対策することにはほとんど意味がない、という無意識の割り切りがあるように推測します。

彼らは最終消費者という立場だけでなく、事業者の立場も持っているため、そのあたりの事情は理解しているのだと思います。

それよりも、より税負担が大きい所得税(事業税や住民税も含む)対策の方が重要であり、そちらのほうに意識が向いている人がほとんどです(中小企業の実効税率はおよそ30%)。

もちろん無関心というわけではなく、税制改正には非常に敏感です。

たとえばかつて、再生可能エネルギーの推進のため、いわゆる「グリーン投資減税」が創設されたとき、目端の利く中小企業や自営業者がこぞって太陽光発電システムに投資しました。これによって消費税還付を受けたり、即時償却によって所得税や住民税の節税をしていたのです。

その後も、生産性向上設備投資促進税制、中小企業投資促進税制へと引き継がれ、彼らは同様にこれら制度を活用して節税をしていますが、多くの人はこういう制度すら知らないと思います。

対策をしてもたかが知れている消費税増税よりも、日々の節税の方が重要であり、そのための情報収集には常にアンテナが立っているということでしょう。

増税の影響はほとんど出ないと考えている

もうひとつの理由は、売り手の心理を知っているため、影響はほとんどないとわかっている点も挙げられると思います。

たとえば典型的だったのが、前述した前回の増税時。

税率が5%から8%にアップする3カ月前あたりから、多くの人が家電など高額商品の駆け込み消費に走りました。そして当然ながら増税後は買い控えます。

これを、商品を作って売る企業の側から想像してみましょう。

駆け込み消費で需要が増えると、売れ行きが堅調ですから、売り手はあえて値段を安くする必要はありません。定価でも売れるなら、そのほうがいい。だから商品の価格は高止まりします。

しかし増税後の反動で、消費者の財布のひもが硬くなると、売れ行きが悪くなります。

では企業は「増税後の反動で売上が下がりました」などという言い訳が、会社の会議の場でできるでしょうか。

当然、売上を上げていかなければならない。なんとか売上を確保する対策を講じる必要がある。

そこで多くの企業が考えつくのは、「値引き」という販促策です。