子持ち女性への冷たい視線が見えなくしていること

——分断と言えば、日本でもあるデータによると「職場の人間関係がうまくいっていない」と思っている人が他の国より多いそうです。女性同士でも、例えば子持ちで定時で帰る人とフルタイムで残業もしている人の間に溝ができることがあります。

それこそ、まさにエンパシーで乗り越えていくべき問題ですよね。「いいね!」ボタンを押すか押さないかは、感情の問題だから変えられない。でも、想像力は高めていくことができるはずなんです。職場でも違う立場の人と腹を割って話してみると、いがみ合っている原因はお互いの性格ゆえじゃなくて、環境にあることが分かると思います。

例えば、子持ちの女性が定時に帰ってしまうことで、そうでない女性にしわ寄せが来るというのは、全社的に残業が多いことが問題なのであって、定時で帰ることが悪いのではありません。労働のシステムや組織の問題なんです。本当は、女性同士対立するのではなく、雇用主に働きかけなければいけないはずです。

——本の中でも、息子さんと直接ぶつかった同級生とは結果的に仲良くなりますが、裏で悪口を言っている子とはいつまでも分かり合えないままというエピソードが出てきますね。

やはり相手とインボルブ(involve)する、直接関わることが大事だと思います。よくTwitterでは対立が見られますが、遠くから石を投げ合っているだけだと、お互いについても限られた情報しか持てない。けれど、実際にその相手に会って関わってみると、これまで知っていたこととは全然違うことがわかるかもしれません。すると、世の中の見え方も変わってくると思います。今は昔に比べてあまりにも情報化社会になりすぎていますよね。うちの息子もInstagramでずっと友達の動向をチェックしています。でも、学校ではスマホは使えないので、実際にぶつかり合って友達になっている。それを見ていると、ひとつの希望だと思いますね。