「転職して学びたい」という姿勢はアウト

——実際に企業から高く評価されているのは、どのような人ですか?

<金融>下田 由紀(エンワールド・ジャパン)

【下田さん】部門横断型、組織横断型の行動ができる人でしょうか。軽いフットワークで部門を越えて動ける人がいると職場の雰囲気が良くなるんです。特にチームのトップに立つような人には柔軟な姿勢が求められるので、そういう人を推薦すると「彼女が来てくれて本当によかった」とクライアントから喜ばれます。

【畑さん】自責の意識で自ら周りを巻き込んで、理想とする環境を作り上げることのできる人はおおむね高い評価を得ています。あとは、覚悟を持って転職できる人。前職にいくら実績があっても過去は過去なんです。サクッと切り替えて過去にとらわれずに、新しい会社や環境に溶け込める人は、たとえ最初は失敗をしても結果に結びつけるのが早いです。

【原田さん】自分の担当とは別の仕事を任されることになった時に「それは私の仕事ではありません」と突っぱねるのではなく、「それ面白そうですね!」「やらせてください!」などと面白がって挑戦できる人は、入社後の評価も高いですね。

<流通小売サービス>原田 周作(エグゼクティブ・ボード)

さらに、デジタルトランスフォーメーションの推進や、そのための環境整備と企業内改革などに携わったことのある人はバリューがあって、どの業界からも引く手あまただと思います。デジタルトランスフォーメーションとはAI(人工知能)やloT(モノのインターネット)などのデジタル技術を用いて、製品やサービス、ビジネスモデルを変えるだけでなく、組織、プロセス、企業文化・風土までをも変革することを意味するのですが、これからは、どんな産業もデジタル化していくことは確実なので、そういった知見があれば、強みになるはずです。ただでさえデジテルに詳しい若い世代が増えてきていますから、全く知らないとか、興味がないという人は今後、厳しくなっていくでしょう。

——逆に「転職は難しいかも……」と感じるのは?

【下田さん】他責にする人は難しいと思います。転職理由を聞いてみるとよくわかるんですが、たとえば転職をしてから、実際に任された仕事が入社前に聞いていた内容と違ったからまた転職したいという場合、「周りがこうだったから」「会社がああだったから」と他人のせいにしてしまいます。他責にするような40代では、どんな環境に入っても、まわりに感謝できず、転職に成功したと感じることができないのではないでしょうか。

それから、金融業界に多いのが、希望するキャリアをお聞きしても「何がしたいかわからない」と回答される方。転職市場が盛り上がっていると聞いて、「自分にも何かチャンスがあるのではないか」というスタンスで、われわれのようなエージェントを頼ってくる方が以前より増えました。もちろん相談に乗りますが、やはり「自分はこうしたい!」という前向きな意思があったり、自分で問題意識を持って、目線を広げたいという強い気持ちが重要ではないでしょうか。

【原田さん】漠然と「転職したいな」「今、転職活動したらどうなんだろう?」と考えている場合には、主体的にキャリアを考えることが大事。「なんとなく今の状況を変えたい」という気持ちでは、転職はうまくいきません。

【畑さん】受け身の姿勢はダメですね。40歳以上の転職では、価値を提供できるかできないか、その会社の経営課題を解決できるかできないかがポイントになるので、「転職して学びたい」というような言葉が出てしまうと、その時点でアウトです。

【原田さん】それと、自分の要望だけを常に言ってくるような人も難しいですね。たとえば周りの人が「こうしたらどうですか?」などと提案をしたとしても聞く耳を持たない人とは、どんなに仕事ができたとしても、受け入れられにくい傾向にあります。でも、そういう自我の強い人は、外資系企業だとびっくりするくらい成功することがありますよ。

【畑さん】おっしゃる通りだと思います。日系企業は組織の作り方が関係構築型なのですが、一方の外資系企業は問題解決型。だから、外資系企業では仕事をどんどん前に進めていける人であれば、多少、関係構築性が弱くても上に上がっていけるんです。対して日系企業では、そのようなタイプの人は敬遠されがちですね。