ドリンクバーで元を取るには20杯飲む必要あり

ところが、相手も商売です。当然、自分のところが損をするような価格設定にはしていないはずです。例えば最もシンプルでわかりやすいのはファミリーレストラン等にある「ドリンクバー」です。通常、ドリンクバーではだいたい200~300円ぐらいの価格ですが、原価はせいぜい5~15円程度だと言われています。これで元を取ろうと思ったら20杯も30杯も飲まなければならないわけで、これはどう考えても無理です。デザートビュッフェの場合は、これに加えていくら頑張ってたくさん食べても絶対に元は取れない構造になっているのです。それが一体どうしてなのかを考えてみましょう。

ポイントは「固定費」と「変動費」にあり

そもそも飲食店のコスト構造は固定費と変動費から成り立っています。店を開けたことで、お客さんが一人もこなくてもかかるのが固定費(家賃や光熱費等)、来た人数分に比例してかかるのが変動費(食材費等)です。したがってお客が一人も来なければ固定費分がまるまる赤字です。お客が一人来れば(一人当たりの料金-変動費)だけ赤字が減ります。したがってたくさん来れば来るほど儲けは多くなります。これは当然ですね。

例えば、あるカフェで普通にケーキを一個食べた場合、その値段が500円だとします。この場合、ケーキの材料費すなわち変動費が200円だとすると、このお店では一人のお客が来て、ケーキを1個食べてくれるたびに300円の粗利益が出るわけです。この粗利益で固定費をまかなうことになります。仮にこのお店の固定費が20万円だとしましょう。するとひと月に680人以上お客が来れば300円×680人=20万4000円ですから、それでようやく赤字を免れることになります。

一方このお店がデザートビュッフェを設定し、値段が3000円で食べ放題とすればどうなるでしょう。仮に来たお客がケーキを10個食べたとしても変動費は200円×10=2000円ですから、このお客から上がる粗利益は1000円となります。つまりケーキを単体で食べるお客よりも3倍以上も儲かるのです。お客の方は「10個も食べたんだからおおいに元を取っちゃったわ、ラッキー!」と喜んでいたとしても、店だって普通以上にがっちり儲かっているのです。

100人前作ってもコストは100倍にならない

また、別のコスト要因も考えてみましょう。料理というものは1人前作ろうが、100人前作ろうが、投入する食材の量が増えるだけで手間が100倍増えるというわけではありません。もちろんケーキの場合は普通の料理のようにまとめて作りづらいものですから多少は手間がかかるでしょうが、それでも100個作ったから手間や時間が100倍増えるわけではないでしょう。それにケーキを一つひとつ皿に載せてお客の席まで運ばなくてもいいわけですから調理や接客にかかる人件費は減ります。

さらに、どれぐらい注文が入るのかわからない単体のメニューに比べると、ビュッフェスタイルの場合は、店側でメニューを決めて用意していればいいわけですから、食材自体の仕入れコストも安くすることができるかもしれません。