シンガポールでは3%の利回りが一般的

1000万円や2000万円などと言われると、特に若年層にとっては途方もない道のりに感じますが、60歳までに30年以上あれば、無理のない積立も可能になります。例えば、年利3%で複利運用できれば、毎月3万5000円の積立額で、30年間で2000万円を目指すことができるのです。

日本では3%の利回りを目指すのは難しいですが、シンガポールでは3%の利回りは一般的で、強制積み立てを利用する際にもそれくらいは目指せると言います。また、養老保険も契約者が受けられる利回りとして、3%程度が現在の実効レートとなっています。

このようにシンガポールの方が日本より、自己責任的なシステムで社会保障も手薄ですが、その分、高所得者の税金も低く、投資対象の選択肢も多いのでパワーカップルなどは老後資金を作ることが容易なのです。しかし、収入が少ない世帯などは日本よりもより厳しい老後が予測されます。ただし、シンガポールでは67歳まで継続雇用を雇用主は申し出る義務があり、賃金のガイドラインもあるために日本のように大幅な賃金カットはありません。高齢になっても働き続けている人が非常に多いです。

日本人がシンガポール人から学べるところとしては、共働きや高齢になっても働き続けるということ、若い頃から収入の約3分の1を貯金する、リスクに慣れて資産運用をするといったことでしょう。日本で3%運用を継続的に行うことは非常に難しいですが、株式や債券などに長期分散投資をすれば期待リターンは上回ります。今すぐに資産運用を考え、時間を味方につける工夫をしたいですね。

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花輪 陽子(はなわ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

外資系投資銀行を経てFPとして独立。2015年からシンガポールに移住。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』など著書多数。