いわゆる老後資金2000万円問題が注目されるきっかけとなった金融庁の報告書。ワーキング・グループの委員として作成にかかわった著者が、報告書の本当の意図を解説する――。
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意図しない注目を浴びた報告書

金融審議会市場ワーキング・グループが作成した「高齢社会における資産形成・管理」と題した報告書が、作成側の意図しないところで注目され話題となっています。私は当該グループの委員のひとりとして作成に携わったため、報告書の作成当事者としてその本旨を世の中に正しく伝えるに至らず誠に残念な想いです。

とはいえ、報告書自体は世間の脚光を浴びて、これを読んだ諸兄姉からは「実にまともな内容だ!」との評価も広がっていて、結果として長期資産形成の必要性への関心が高まってきているとも言えましょうか。

作成者が語る報告書2つのポイント

この報告書には2つの主題があります。

ひとつは、高齢社会の進展で各人がいや応なくこれまでの想定より長生きしてしまうことを前提にした、日本の生活者全体に向けてのメッセージです。公助としての公的年金に加えて自助としての長期資産形成へと世代を問わず正しく行動することで資産寿命も延ばして、自らが納得できる豊かな人生作りを自律的に考えていきましょう! という至極まっとうな提言です。

もうひとつは、生活者が高齢社会を能動的に生き抜くために必要とされる金融サービスを、「顧客本位の業務運営」にのっとって実践していくことの重要性を日本の金融業界に対して課題提起しています。金融機関の社会的存在意義に立脚した観点から言及していて、金融業界全体に新たな事業モデルの真摯な構築を求める内容になっています。