男らしさを示す11の項目
私たちが感覚的に利用している「男らしさ」とは、具体的に何を指すのでしょうか。インディアナ大学の研究で、過去に行われた78件の研究データをまとめたメタ分析で、1万9453人の男性を対象に、男らしい人とメンタルヘルスの関係について調べています。そこでは、伝統的な「男らしさ」の項目は次の11個にまとめられました。
1.社会的ステータスを重視する
2.感情を出さない
3.他者に依存しない
4.女性より優位に立とうとする
5.女性との性的関係が多い
6.同性愛者への蔑視
7.勝つことを望む
8.リスクを選ぶ
9.暴力的
10.支配的
11.自分の仕事を何よりも優先する
1つは「社会的ステータスの重視」。つまり稼ぎ手として社会的な成功を収めていることです。2つめは、「感情表出の制限」で、痛くても辛くても、耐えて表に出さないなど感情を抑制することは、精神と身体の強さと関連しているという考えです。3つめは、「他者に依存せず、指導的、自立的行動をとれる力」です。そして「女性への優位性」をもち、「女性に対して性的に積極的(多くの性的関係をもつ)」で女性を従わせることとされています。研究で用いられる男性らしさを測る尺度では、「男性にとってセックスが上手いことは重要だ」という考え方に対する得点を測っていますし、「男らしさ」は女性を支配下に置くことで担保されると指摘する日本の研究論文もあります。その他、「勝つことを望む」「リスクを選ぶ」「暴力的」「支配的」「自分の仕事を何よりも優先する」「同性愛者への蔑視」という項目があります。
そして分析の結果、11項目の中でも「他者に依存せず、指導的、自立的行動をとれる力」「女性への優位性」「女性に対して性的に積極的(多くの性的関係をもつ)」という3つの項目について点数の高い人は、ストレスや不安感の増大、薬物乱用に陥る、身体に自信がないなどのメンタルヘルスの低下が起こりやすい傾向にあることがわかりました。
更に「女性への優位性」「女性に対して性的に積極的(多くの性的関係をもつ)」という「男らしさ」に縛られている人は、最も性差別的な行動をする傾向が見られたと報告されています。つまり、女性との関わりにおける「男らしさ」の呪縛が強いほど、メンタルヘルスに影響をきたしやすいということができます。
日本は幸福度の男女差が最も大きい
世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べた世界価値観調査というものがあります。この調査によれば、日本は男性より女性の幸福度が上回っており、男女間の幸福度に最も大きなギャップがあることがわかります(図表1)。
年功序列や終身雇用が崩壊しつつある現代では、仕事に打ち込んでも収入が上がらないという思いを持つ男性も多いことが考えられます。また、共働きが増えていることで、特に家庭では、従来の「男らしさ」に加えて新たに女性の社会進出への理解や家事・育児の能力も求められ、自身の成長過程の中で養われた伝統的な考え方と、新しく求められるものの中で悩み、アイデンティティが崩壊することになるのでしょう。