本誌夏号(2019年6月28日発売)では「投資」をテーマにお話ししましたが、ここではさらに“伝説の投資家”をご紹介しましょう。今も語り継がれる彼らの生き様や言葉の中には、勝てる投資のヒントが隠されているかもしれません。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/MicroStockHub)

世界一の大金持ちは、世界一のケチ!?

まず女性投資家ですが、歴史上もっとも有名なのは、19世紀のアメリカ人のヘティ・グリーンです。捕鯨業で財を成した父親から100万ドルもの遺産を相続した彼女は、南北戦争で劣勢だった北軍側の公債を買いまくるという大博打に勝ち、大金を稼ぎます。さらにそれを元手に、大陸横断鉄道への投資や不動産、株の空売り、国債、貸金業、投資信託、商品先物などでも大きく儲け、1億ドル以上を稼ぎました。彼女は「ウォール街の魔女」と恐れられ、当時「世界一の大金持ち」と言われました。

しかし彼女は「常軌を逸したケチ」としても有名。1食の食事代はわずか5セント、移動は常に乗合馬車、服はボロボロにすり切れた黒いドレスで、ほとんど洗わず、新聞紙を挟んで寒さをしのぎました。また医者代をケチったせいで、膝を脱臼した息子は足を切断するはめになり、自身も医者代を浮かせるためヘルニアの痛みをガマンしました。彼女は「世界一のケチ」として、ギネスブックに認定されました。

お倉、貞奴……。日本の女性投資家たち

日本にも、伝説の女性投資家がいます。まず「富貴楼のお倉(ふうきろうのおくら)」です。江戸末期の遊女だったお倉は、明治4年にパトロンの資金提供を受け、横浜に料亭「富貴楼」を開きます。彼女は持ち前の明るい人柄で人気者になり、いつしか料亭は伊藤博文や大久保利通らが通う「政界情報交換所」のようになりました。そしてお倉は、そこで得た情報をもとに株を買い、巨額の利益を得たそうです。

そして女優「川上貞奴(さだやっこ)」です。彼女は伊藤博文や西園寺公望らからひいきにされた芸妓でしたが、日本新劇の祖・川上音二郎と結婚して川上姓になります。彼女は音二郎死後、経済的に困窮しますが、そんな彼女を助けてくれたのが、かつての恋人で福沢諭吉の娘婿・福沢桃介でした。株式投資で巨万の富を得ていた桃介と貞奴は不倫関係になりますが、やがて桃介が死に、貞奴がその株を受け継いで投資を続けたことで、彼女は日本で最も稼ぐ投資家となったのです。