世界一の大金持ちは、世界一のケチ!?
まず女性投資家ですが、歴史上もっとも有名なのは、19世紀のアメリカ人のヘティ・グリーンです。捕鯨業で財を成した父親から100万ドルもの遺産を相続した彼女は、南北戦争で劣勢だった北軍側の公債を買いまくるという大博打に勝ち、大金を稼ぎます。さらにそれを元手に、大陸横断鉄道への投資や不動産、株の空売り、国債、貸金業、投資信託、商品先物などでも大きく儲け、1億ドル以上を稼ぎました。彼女は「ウォール街の魔女」と恐れられ、当時「世界一の大金持ち」と言われました。
しかし彼女は「常軌を逸したケチ」としても有名。1食の食事代はわずか5セント、移動は常に乗合馬車、服はボロボロにすり切れた黒いドレスで、ほとんど洗わず、新聞紙を挟んで寒さをしのぎました。また医者代をケチったせいで、膝を脱臼した息子は足を切断するはめになり、自身も医者代を浮かせるためヘルニアの痛みをガマンしました。彼女は「世界一のケチ」として、ギネスブックに認定されました。
お倉、貞奴……。日本の女性投資家たち
日本にも、伝説の女性投資家がいます。まず「富貴楼のお倉(ふうきろうのおくら)」です。江戸末期の遊女だったお倉は、明治4年にパトロンの資金提供を受け、横浜に料亭「富貴楼」を開きます。彼女は持ち前の明るい人柄で人気者になり、いつしか料亭は伊藤博文や大久保利通らが通う「政界情報交換所」のようになりました。そしてお倉は、そこで得た情報をもとに株を買い、巨額の利益を得たそうです。
そして女優「川上貞奴(さだやっこ)」です。彼女は伊藤博文や西園寺公望らからひいきにされた芸妓でしたが、日本新劇の祖・川上音二郎と結婚して川上姓になります。彼女は音二郎死後、経済的に困窮しますが、そんな彼女を助けてくれたのが、かつての恋人で福沢諭吉の娘婿・福沢桃介でした。株式投資で巨万の富を得ていた桃介と貞奴は不倫関係になりますが、やがて桃介が死に、貞奴がその株を受け継いで投資を続けたことで、彼女は日本で最も稼ぐ投資家となったのです。
知識を武器に自分に相応しい手法を貫け!
男性投資家は名言をはさんで見ていきましょう。まずはジェシー・リバモア。この人は「ウォール街のグレートベア」の異名を持つ天才相場師でした。若くして相場の才能を開花させた彼は、世界恐慌時には空売りで大勝利し、1億ドル(約4000億円)を稼いだと言われています。ただし、その人生は浮き沈みの激しいもので、3度の破産を経験した後、4度目にピストル自殺を遂げています。
彼は、知識を重視する名言を数多く残しています。「知識は大きな力だ。愚かで安易な考えで相場に手を出せば、すべてを失ってしまう」「無知を警戒せよ」「人間の知性を邪魔するのは常に、人間の情報であり情動である」……。また知識以外にも「自分の性格に合った無理のない手法を考案し、そのルールに従うこと」「相場に勝つ必要はない。勝つべき相手は自分自身である」といった名言も。
投資の神様、ウォーレン・バフェットの場合
次にウォーレン・バフェット。この人は「オマハの賢人」と讃えられる、現代アメリカの“投資の神様”です。世界最大の投資会社「バークシャー・ハサウェイ」のCEOで、世界長者番付では、過去3回1位になっています。
彼の名言は、こういうものです。「買うのは企業であって、株ではない」「株価は長期的には、業績に連動する」「リスクは、あなたが何をやっているか理解できない時に起こる」「並の企業を安く買うよりも、優良企業を適正価格で買うべし」といった名言は、彼の投資スタイルからきています。彼が好む投資スタイルは「バリュー投資」、すなわち将来性があり、企業価値に比べて割安な株を買って長く運用するというもので、経済学者ケインズの晩年の手法と同じです。バフェット自身も言っていますが、彼はケインズの手法や考えをかなり手本にしています。
予測不能なアニマルスピリットに注意
最後はそのケインズ。ケインズは「世界一有名な経済学者&投資家」で、著書では市場の不安定性を批判しているのに、実世界ではその不安定性につけ込んだ投資に熱中するなど言っていることとやっていることの差が面白い人です。
彼の投資スタイルは、若い頃は短期的な投機が中心でしたが、晩年は長期的な成長企業の配当利回り狙いへとシフトします。これは彼が投機に失敗し、2度も破産の危機を迎えて、命からがら脱した実体験があるせいです。
ケインズの名言は「アニマルスピリット(群集心理による気まぐれな集団行動)」「投資は長期にわたる見込み収益の予測。投機は市場の心理の予測」「美人投票の論理(市場心理の読み方。美人投票の優勝者を当てるには、自分の好みではなく、審査員の平均的な好みを予測して当てるのがコツ)」などです。特にアニマルスピリットは要注意です。そのキモとなるのは“自信”。すなわち、市場が根拠のない自信に基づく楽観論に支配されたらバブルが生まれ、投資家が集団で自信を失ったらバブルは弾けるのです。
次回はバブルについてお話しします。