日本での卵子提供による治療はまだ少ない

【せいじ】結構行われているんですね! 卵子が無い場合は「卵子提供」になるんですか?

【先生】はい、卵子提供に関してはJISART(日本生殖補助医療標準化機関)が規定するガイドラインに基づき、適応できると審査がおりれば「卵子提供実施施設」と登録された不妊治療の専門クリニックで治療を行えます。ただ、実際の治療件数は非常に少なく、年間数件~十数件という実施数です。

【せいじ】まだまだ実施件数は少ないんですね……。

吉川雄司著、月花瑶子監修『やさしく正しい妊活大事典』(プレジデント社)

【先生】精子ドナーによる精子を活用したAIDの歴史は70年程度あるのに対して、日本国内でJISARTによる卵子提供の治療は2007年にはじまったばかりでして、まだ十数年の歴史しかないです。また日本で正式に実施する場合は、さまざまな必要な審査についての倫理審査があるため、ハードルがとても高いです。

【せいじ】なるほど。たまにニュースか何かで「海外で卵子提供を受けた」と耳にするのは。このJISARTとはまた別なんですよね?

【先生】はい、卵子提供は国外では日本よりも実績があり、またJISARTの規定する「適応対象」から外れた場合でも卵子提供を受けたい場合は海外で卵子提供を受けることになります。

【せいじ】それって、日本人以外の卵子になるんでしょうか?

【先生】いえ、そんなことはなくて、海外の卵子提供バンクに日本人の卵子ドナーから提供された卵子が保存されているので、日本人の卵子を使った顕微授精が可能です。

【せいじ】なるほど……。この辺りは、本当に夫婦の考え方次第ですよね。

【先生】そうなんです。夫婦二人の卵子と精子での妊娠しか望まない方もいれば、AIDや卵子提供を受けて子どもを授かりたいと考える方もいます。なので、もし「夫婦では妊娠の可能性がない」とわかったときというのは、「不妊治療をやめるかどうか」を考える一つのタイミングではあります。

何度かチャレンジしても妊娠しなかったら?

【せいじ】残りの②と③は具体的にはどんな場合なのでしょうか。

【先生】②はステップアップをして体外受精や顕微授精に何度かチャレンジしてもなかなか妊娠しなかったり、妊娠はしても流産を繰り返してしまうような場合に、精神的に治療の継続が辛くなってしまうような場合です。もちろん、ここには③の「年齢的にもう続けても見込みが低いと考える」というケースや「経済的にもう続けられない」というケースも関係してきます。しかし、年齢がまだ若く、経済的な余裕はあっても、繰り返される「妊娠判定における陰性結果」や「流産」によって精神的に辛くなり、治療の継続が厳しくなることもあります。

【せいじ】不妊治療は「精神的負担」が大きいという話がありましたもんね……。

【先生】そうですね。不妊治療は「いつ妊娠できるのかわからない」という不安や、費用も高いので経済的なプレッシャーからもストレスを大きく感じてしまいます。そんななか、繰り返し陰性判定や流産を経験すると、かなり大きな精神的負担がのしかかります。なので、「もう諦めた方がいいかもしれない」という考えが頭によぎることはあります。

【せいじ】でも、すんなり諦められるものでもないですよね……。

【先生】はい、何よりも長い間「子どもが欲しい!」と願い続けていて、その気持ちはとても大きなものですし、またたくさんのお金をかけてきているので、「今やめたら、今までのお金も、努力も、全て無駄になってしまうのでは」という考えは頭から離れないと思います。

【せいじ】もし、「諦めた方がいいのかな」と考えるようになったときは、どのように考えて意思決定するのが良いのでしょうか?

【先生】正解はありませんが、次の3つは夫婦で考えてみてほしいと思います。

①予算と期限を決める
②違う方法を試すか考える
③夫婦の生き方について考える