当時、競合他社が何社もあり、赤字を解消するために、あの手この手を考えました。たとえば加盟している飲食店が不便に思っていることや、ユーザーの「こんなものがあったらいいな」という希望を実現していくと、そのサービスにお金を払ってもいいと思ってもらえる。だからクレームは“宝の山”で、そこから大きなヒントを得られました。でも3年間赤字続きで、途中で投げ出したくなったときもあって。私は人に弱みを見せたくないので、トイレでこっそり泣いたことも……。

座右の銘は「艱難汝(かんなんなんじ)を玉(たま)にす」。失敗も苦しみも、乗り越えたあとに必ず成長できます。社員たちの前でも、「必ず成功するから!」と言い続けました。言葉に出していると不思議とその通りになるもので、4年目になったときにやっと黒字転換し、ヘラクレス(当時)に上場できたのです。

財産は若者支援のために寄付したい

上場後、会社の価値を上げるために一部株式譲渡しているので、私にも利益は出ています。富豪だと思われているのか、クルーザー、プライベートジェット、宝石など、いろんなぜいたく品の勧誘の手紙が来るのですが、封も開けないで即ゴミ箱行き(笑)。休日にスキーやダイビングをするくらいで、高価なものにはほとんど興味がありません。

それよりも、社会に貢献できるようなお金の使い方ができればベスト。現在「全国環境対策機構」という公益社団法人の理事も務めています。親と離れて暮らしている子どもたちの生活や、勉強するための資金をバックアップする仕組みがあり、支援をしています。お金やチャンスがないからといって、若い有能な人たちの資質を生かせないのはもったいない。ベンチャー企業のトップとして、できる限りのことをしたいのです。将来的に私の財産は子どもには譲らず、寄付するつもりです。

仕事では次々にやりたいことが出てくるので、常に企画を温めてリサーチをしている状態。そのうちに「これはイケる!」とアイデアが熟してきたら、週1回の経営会議で「こういうことをやろう」と提案するのが楽しくて! 社員はまた仕事が増えると、嫌がっているかもしれませんが(苦笑)。とはいえ、社長職が長くなったので、そろそろ誰かにバトンタッチしなくてはと思っているところ。新規事業に携わっていたいので、部長に格下げになっても構いません。

まだまだ働きますが、50代半ばなので、老後の生活のための貯蓄はマストです。公的年金はもらえないと思っているほうが気楽でしょう。長い人生を生き抜くためのお金は、社会に頼らず自分の力で貯める。そういうスタンスで今後も生きていきたいのです。

▼私のマネー3カ条
(1)コンビニはモノを買う場所ではなく、マーケティングの場所
(2)ユーザーのクレームは利益を生む“宝の山”
(3)自分の財産は、社会貢献のために使う

構成=東野りか 撮影=神ノ川智早