息子は息子で、すでに小学生時代に「財産の割合は株・不動産・現金を3分の1ずつで持つのがいい」と教えられたり、擬似株式投資の授業を受けたり。株式を公開する前に買った株が、IPO(新規株式公開)後に価値がグンと上がることも学んだりしました。現在、彼はアメリカでエンジニアとして働いていますが、“一生もの”のお金の教育を受けられたことは、貴重な経験だと思います。
会社を上場後にリーマン・ショックが到来
IPOといえば、わが社も2008年3月に東証マザーズに上場して、最高益を出しました。でも、その半年後にリーマン・ショックが来て。うちはデジタルマーケティングの会社で、不況になると広告宣伝費が真っ先に削られますから大打撃です。そのときはかなり動揺したけれど、周囲には「大丈夫、大丈夫」と平静を装っていました。会社として、短期的にやるべきこと、長期的にやるべきことを考え、そのときにできる最大限のことを粛々とやり続け、なんとか危機を切り抜けました。
以前から最悪の事態に備えて、リスクマネジメントをきっちりとやっていたこともよかったのでしょう。万が一、何カ月間か売り上げがなくても大丈夫なように現金をストックしておいたり、特にお金が必要ではなくても銀行からお金を借りて良好な関係を結んでおいたり。この“守り”が、重要なポイント。
社員は基本的に前向きなモチベーションを持って働いています。営業ならば、19年の収益が1億円だとしたら、20年は2億円にする。開発なら前よりも必ずいいものを作るなど、目標設定が常に“攻め”。でもいいときも悪いときも会社を“守る”ことが、経営者である私のミッションだと思っています。
自分のプライベートなお金に関しては、増やすことに頓着していません。健康ならば、死ぬ直前まで働き続けたいと思っていますし、そうすれば何らかの稼ぎがあるので、お金に困らないだろうと楽観的。アメリカで10万円しかなかった時代も、「なんとかなる」と思っていました。根がポジティブなんでしょうね。
“お金の有無”は幸せとは関係がないような気がします。繰り返しになりますが、私はエンジニアの素晴らしいアイデアを聞いて、それでお金をもうける仕組みを思いつく瞬間が一番エキサイトできる。つまり自分が“好き”なことは何なのかを、把握していることが大事なんです。好き=得意なことは成功確率が高い。だから、自然にお金がついてきます。そうなると一層仕事を頑張れるので、またお金が入ってくる――。そんないい循環に入ると、理想のお金の稼ぎ方ができるのではないでしょうか。
(1)私的なお金で一番使うべきは自分と子どもの教育費
(2)会社の最悪の事態に備えお金のリスク管理は必須
(3)健康なら死ぬ直前まで働けばいい