男性は「主な育児の担い手」ではないのか
5月31日付の米・ニューヨークタイムズ紙は、JPモルガンの補償金支払いをめぐる記事を、男性社員の写真入りで1ページの上半分を使って、大々的に取り上げた。同紙などによれば、JPモルガンの社内規定では、育休の対象を「主な育児の担い手(primary caregiver)」と定め、期間は最大16週間とし、給与は全額支給としていた。男性社員は、同期間の有給育休を申請したが、「主な育児の担い手」と判断されず、2週間の育休しか認められなかったため、性差別だと訴えた後、今回の和解に至った。
この問題を通じ、育休をめぐる米国の現状として、①主たる子育ては母親が担うとの考えがまだまだ根強い、➁男性が育休取得に踏み切るには、ハードルが高い、③制度の創設や充実は州や企業に任せられている――が主な論点として浮かび上がる。特に、①と➁は、男性の育休取得論議が盛んになっている日本にも相通じる話だ。
父親の育休で母親の健康が劇的の改善
同じくニューヨークタイムズ紙は今月初旬、米スタンフォード大の研究者が、育休先進国であるスウェーデンを引き合いに「出産直後の母親が健康を維持するには、母親の要求に応じながら、父親が数日間であっても柔軟に育休を取ることが効果的だ」とする分析結果を掲載した。母親が育休中であっても出産後1年間に限り、父親が必要に応じて30日を上限とした育休を取れるよう2012年に法改正したところ、母親の健康状態が劇的に改善したという。JPモルガンの問題と併せて、米国でも男性の育休取得が話題に上ることが今後は一段と増えるかもしれない。
米国に比べて、日本の育児休業制度は極めて充実しており、一歩も二歩も先を進んでいると言ってもいいだろう。ただ、制度こそ充実していても、実際に取得する男性が少ないままでは、絵に描いた餅に他ならない。厚生労働省が4日に発表した「18年度雇用均等基本調査」(速報版)では、男性の育休取得率は前年度から1.02ポイント上昇の6.16%。6年連続で上昇しているとはいえ、20年までに13%に引き上げる政府目標とは大きくかけ離れているのが実態だ。