ケア・介護分野の無印良品を目指す

「病院に長くいて服も同じものを着ていると、なんだかだんだん“患者っぽく”振る舞うようになるんです。最期まで“私”として生きていくために、衣食住の衣の分野から、『患者らしくより私らしく』を支えたいんです」という塩崎さん。いつかはライフスタイルブランドとして広げたいという夢があり、目指すはケア・介護分野の「無印良品」だという。

先日TOKIMEKU JAPANは2度目の出資を受けた。トリプルネガティブの乳がんでは、治療後10年までは油断ができない。出資を受ける際も、自分がいつどうなるかわからず、迷惑をかけるかもしれないと伝えたが、「そんなことは考えなくていいから売り上げを気にしてくれ」と笑って言われたそう。

前向きに生きる塩崎さんの周囲には笑顔があふれている。がんが人生を変えたことは間違いないが、「どう生きるか」は彼女自身が決めたのだ。ブランドのコンセプトである「患者らしくより私らしく」を自ら実践し、塩崎さんはこれからも前に進んでいく。

塩崎良子(しおさき・りょうこ)
TOKIMEKU JAPAN社長
1980年、千葉県生まれ。2004年より、アパレルショップの海外バイヤーを経て、06年アパレル会社を起業。セレクトショップ、リース専門店、ドレスレンタルショップ等を経営。14年1月若年性乳がんを発症。闘病に専念のため、会社を閉める。15年6月主治医の提案で、がん患者の為のサイバーズFASHION SHOWを企画、運営。多くのメディアに取り上げられる。16年、ソーシャルビジネスグランプリでグランプリと共感大賞をW受賞し、TOKIMEKU JAPAN設立。17年、ケア・介護用品ブランド『KISS MY LIFE』を立ち上げる。同年7月より病院内店舗事業を開始。18年雑誌「AERA」注目の社会起業家54名に選出される。MASHING UP 女性起業家によるビジネスコンテストで優勝。

文=藍羽笑生