現代はハラスメントの渋滞が起きている時代
今もなお、社会にも職場にもハラスメントが満ち満ちています。女性からすれば、ただ男女差別のないフェアな競争環境がほしいだけなのに、それがない。企業の職場環境は、いつの間にか歴史の中で「女性を受け入れないことが前提」になっている。だから女性が世に出ようとすると、セクハラやパワハラ、マタハラ、モラハラ……、各種ハラスメントが同時多発的に襲いかかってくるのです。
これは女性が活躍するうえで、大きな障害になります。実際、このハラスメントと闘うことに疲れてしまうと上昇志向がなくなってしまい、負けまいと踏ん張ると、“肩に力が入った女”扱いされてしまいます。
だからといって「男社会に媚びながら、上手に自分の現在位置をアップデートしていく」方式がいいかというと、全然よくない。男社会に意図的に甘えてしなだれかかり、男性に引き上げてもらうやり方は、確かに有効です。過去の歴史を見ても、中国の西太后に江青、ロシアのエカテリーナ2世、フィリピンのイメルダ・マルコス、ルーマニアのエレナ・チャウシェスクなど、みんなそうやって居場所を与えられ、そこから徐々に自分の立ち位置を広げてきました。
でも、彼女たちの多くは「悪女」として知られ、それは社内で媚びる女も同じです。こういう女性の生き方は「会社員としての処世術」であって、「職業人としての生き方」ではありません。それによる成功は、「職業人としての誇りを捨てること」でしか得られません。あなたが仕事に誇りを持ち、本当にナチュラルに自立して生きたいのならば、そんな生き方は選択すべきではありません。
労働とは「人間本来の喜び」であるもの
マルクスも言うように、労働とは本来、創造的な活動であり、自己実現の場であり、人間本来の喜びでなければなりません。ならば、男社会との関係性を気にすることでなく、しっかりと稼ぎ、なりたい自分になり、そこに喜びとやりがいを感じ、自尊心を満たす働き方をしたいものです。そうすることで初めて、女性自身も働きやすさを感じることができるのではないでしょうか。
代々木ゼミナール公民科講師。「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。経済史や経済学説に関する著書はベストセラーに。
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