ビジネスになると確信できた瞬間

準備を始めてはみたものの、井出さん自身にサービス内容に対する不安があった。その不安を払拭してくれたのが、最初に登録してくれた保育所での調理経験をもつ料理家だ。登録に際して実際に離乳食を作ってもらうことになったのだが、そのときふるまわれた料理を子どもたちはまったく嫌がらず、おいしそうにぱくぱくと食べたのだった。自分たちがあんなに作るのを苦労した離乳食である。その子どもたちの姿を見て、「これならビジネスになる」と確信したのだった。

シェアダインで依頼できる作り置きのイメージ

一方で、プロダクト開発は難航した。外部に委託したものの、開発が遅れ、なかなかサービスを開始できない日々が続く。2018年2月にはサービス開始予定だったが、それもどんどん遅れた。

同時期にアクセラレータープログラムに参加した企業のどこよりも、立ち上がりが極端に遅く、しまいには「一番進んでないのはシェアダイン。本当にやる気があるのか」と叱られる始末だった。それでも、料理家や投資家などいろんな人を巻き込んで進んできたため、「自分からは事業をやめられない」と井出さんは強い責任を感じながら、必死でサービス開始のために尽力した。

「今までのキャリアとは違って、スタートアップは時間軸もまったく変わってしまう。コンサルをやっていた時は、『なぜコンサルなんて必要なんだろう』と正直思っていたこともあったが、いざ自分が経営を回すようになると、目の前のことで手いっぱいで、外との関係がまったくなくなってしまうので、情報を与えてくれる人が必要になるのだなとよくわかりました(笑)」

前月比150%の伸びをキープ中

同年5月16日に、ようやくサービスはローンチした。幸運にも、ちょうどシェアサービスが日本全体で盛り上がり始めたタイミングだったため、サービス開始間もないにもかかわらず、日経新聞など複数のメディアに取り上げられ、よいスタートを切ることができた。そこから「雑誌を見ました」という形で料理家の登録が増加していった。

とはいえ、マッチングビジネスの難しさは、需要と供給のバランスだ。供給サイドである料理家ばかり増えてもだめで、需要サイドである利用者も合わせて増えていかないといけない。それに合わせるためにも、エンジニアは自前で雇うことにして、よりステップの少ない、使いやすいサイトを目指していった。

子育て期の家庭の利用が多い。

現在は5000~12000円(料理家により異なる)プラス食材費、基本3時間の訪問で12品程度の食事を調理するというサービスを提供している。業績は順調に伸びており、利用者登録件数は前月比150%をキープしているという。2019年3月には月額12000円で栄養士の料理が食べられるサブスクリプションサービスも始めた。

最近では共働き夫婦以外のニーズとして、妊活中の人やカロリー計算が必要なトレーニング中の人、病院と同じものを食べたいと考える糖尿病の人など専門性の高い食事は、管理栄養士の資格を持つ料理家に依頼するケースが増えているそうだ。