男尊女卑が根強く残る組織

企業ならこれほど人件費がかかりすぎる作業はとっくに見直されているはずなのに、いまだにベルマークという母親たちへの“苦行”が続いているのは、「女の人件費はタダ」という考えが教育業界に根付いていると同時に、母親の金儲けを是としない、うさんくさい「道徳的観念」に依るわけだ。

あるいは、目の前の活動に追われ、「止める」という決断に踏み切れないPTAも多い。

前出の香織さんは本部役員に、ベルマークを止めましょうと訴えた。

「だけど、本部役員は首を縦に振らないんです。『子どものためだから』『前からやっていることだから』と。なんのために、PTA会費を集めているのでしょう。毎年、100万円以上、繰り越しているんですよ」

ここまでしないと、母親たちは学校に寄付すらできなくされている。いまだに「女はお茶出し」という観念が色濃く根付き、「女の人件費はタダだ」という固定観念が、如実に貫かれている組織がPTAなのだ。

黒川 祥子(くろかわ・しょうこ)
福島県生まれ。ノンフィクション作家。東京女子大卒。弁護士秘書、業界紙記者を経てフリーに。主に家族や子どもの問題を中心に、取材・執筆活動を行う。2013年、『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』(集英社)で、第11回開高健ノンフィクション賞受賞。他の著作に『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』(集英社)、『県立!再チャレンジ高校』(講談社現代新書)ほか。息子2人をもつシングルマザー。

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