誰もがバカバカしいと嘆く仕事

多くの役員たちが「あまりにバカバカしい」と嘆く筆頭が、ベルマークだ。東京山手地区に住む、香織さん(44、仮名)はこう証言する。

「朝に学校に行って、子どもたちが切り取ってきたベルマークを回収し、それを会社ごとに分類し、点数を計算して、このマークを会社ごとに紙に貼り付けるという気の遠くなるような作業を、平日の昼間に役員のお母さんたちが集まって延々とやるわけです」

ここに父親が加わることはない。ベルマークは母親限定の作業と言っていい。ベルマークを巡って、全国各地から怨嗟の声が上がる。

「30人で作業して、数千円にしかならない。パートの時給を寄付したほうがまだマシ」
「まるで労力奉仕。費用対効果があまりに悪い」

なぜPTAは、このような理不尽な作業を行ってまで、学校に設備を寄付しないといけないのか。香織さんが言う。

「今では協賛企業も減ってきて、いくら頑張っても、あまり良い品物ってないんです」

なぜ、ベルマーク活動はなくならないか

なのに、なぜ、ベルマークは無くならず、母親たちに苦役を強いるのか。

それは人々のなかに「女の人件費はタダ」という考えが根付いているのと同時に、母親の金儲けを是としない「道徳的観念」が教育業界にあるからだ。

PTAという組織は大抵、会長は父親で、実働部隊は母親という構造になっている。すなわち、頭脳は男で、手足は女というわけだ。この頭脳部分にとって、「女の人件費はタダ」なのだ。戦前から変わることのない女性蔑視の通念が、PTAでは当たり前のこととして貫かれているのだ。

この「女の人件費はタダ」という考えは、PTAには発足当初から根強くある。さまざまな行事の来賓へのお茶出しだって、そうだ。下手をすれば、有給を取ってまで、母親たちは来賓へのお茶出しに駆り出される。ベルマーク同様に、ここに父親はいない。

ベルマークは戦後、僻地の教師が新聞に学校の窮状を訴え、教育設備費などの援助を求めたことが発端として発足した、文部省(当時)の許可を得た教育設備財団だ。そこには「経済と道徳の調和」を説く思想があるという。わかりやすく言えば、「母親たちは道徳と両立する経済活動を担いなさい」ということだ。