女性ホルモンのウソ・ホント

「バリバリ働くと男性化する」などちまたにはホルモンにまつわる根拠のない噂がたくさん。イーク表参道副院長の高尾先生がホントのことを教えます。

閉経すれば卵巣がんにはならない

ウソ:閉経して役目を終えた卵巣は、やがて萎縮していきますが、卵巣がんは遺伝子変異によっても起こるため、年齢が上がるとともにリスクが高まります。また、子宮体がんなど閉経前後から増えるがんも多いので、定期的に検診を。

太っている人はエストロゲンが多い

ホント:女性ホルモンは卵巣以外にも、副腎や脂肪からもつくられます。太っている人はそのぶんエストロゲン量が多く、閉経後もその影響を受け続けることになります。肥満の人が乳がんや子宮体がんのリスクが高くなるのはこのため。

ホルモン補充療法はがんリスクを上げる

ウソ:子宮体がんのリスクはホルモン補充療法(HRT)によってむしろ低下します。一方、乳がんリスクは5年以上のHRTで高まりますが、5年未満であればリスクは増えません。HRTを受けている間はがん検診を必ず受けましょう。

更年期症状の強さは遺伝する

ホント:母親の更年期症状が強かった場合、娘も似ることが多いようです。また、更年期障害は几帳面でまじめなタイプの人がなりやすいといわれます。両親の介護や死による心身の疲労や喪失体験が引き金になることも。

30代で生理が不順なのはプレ更年期のサイン

ウソ:視床下部はストレスの影響を受けやすいため、生理周期が短く、出血量が減るといった更年期に似た症状が出ることがあります。これはストレスによるホルモン分泌の乱れ。プレ更年期という言葉は医学的にはありません。

PMSがひどいと生理痛も重い

ウソ:因果関係はありません。生理痛の原因となる子宮を収縮させるプロスタグランジンは、子宮内膜から産生されます。よって子宮内膜が厚い人は生理痛が重い。子宮内膜を薄く保つピルが生理痛の緩和に効くのはこのためです。

閉経後は男性よりもエストロゲンが減る

ホント:男性も副腎などで女性ホルモンがつくられています。女性のエストロゲン量は閉経で急激に低下し、ついには男性よりも減ることがわかっています。それにともない、高脂血症、動脈硬化などのリスクも男性並みに高くなります。

恋愛をすると女性ホルモンが増える

ウソ:恋愛やセックスによって女性ホルモンが増えることはありません。また、女性ホルモンの分泌は年齢とともに減るものなので、増やすことは難しいです。ストレスを減らして禁煙するなど、急激に減らさないように心がけましょう。

高尾美穂(たかお・みほ)
イーク表参道副院長
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター。慈恵医大病院産婦人科助教を経て現職。ヨガ指導者としても活躍し、女性のカラダと心を多角的にサポート。
 

小柳衣吏子(こやなぎ・えりこ)
アオハルクリニック院長
ウェルエイジングを日々探求する皮膚の専門家。順天堂大学医学部卒業後、2011年より現職。同医学部皮膚科助教(非常勤)、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本美容皮膚科学会会員、日本抗加齢医学会専門医。
 

構成=中島夕子