途中で資金が足りなくなったらどうしよう……

手持ちの資金が枯渇しないよう、最低でも月商の1カ月分の現金はすぐに用意できる状態にしてください。

それでも資金不足に陥ってしまったら、優先順位をつけて対策を。まずは無駄な経費を徹底的に削減することから始めましょう。次に、家族や親族、金融機関からの借り入れの検討を。このあたりまででなんとか資金を工面できれば理想的です。

それらがどうしても難しいときには、取引先や仕入れ先に売掛金の早期回収や買掛金の支払い延期の相談を。従業員を抱えている場合は賞与や給与の減額、整理解雇なども検討する必要があります。

借入金を増やさないことも大事ですが、事業を続けていくなら、取引相手を不安にさせたり、自ら信用を落としたりする行為はできるだけ避けたいところ。こういった状況を未然に防ぐためにも、最初の事業計画が大事になってきます。

▼独立した先輩たちに聞きました!
○成功:円満退社を心がけ、独立後は下請けに
デザイン会社を経て、デザイナーとして独立。円満に退職し、仕事はそのまま下請けとしてもらえることに。会社員時代に知り合った仲間からの仕事の紹介は途切れることはない。独立前は人間関係を良好に保つことに留意し、人脈を広げておいてよかった。(45歳女性/39歳で独立)
×失敗:下調べせずに開業。経営計画が甘く、資金繰りが大変!
輸入雑貨のネットショップを開業したが、こんなにも競争が激しく、利益率が低いとは思わなかった。仕入れ資金と広告費、運営費を融資でまかなえるかどうか、資金繰りが毎月大変。業界や商品をよく調べてから、方向性を決めればよかったと後悔している。(42歳女性/40歳で独立)
○成功:無料相談を利用し、戦略的な売り込みができた
会社員時代に身につけたノウハウをもとに、Webサイト運営のコンサルタントに。起業コンサルタントに無料相談したところ、出版でのブランディングを勧められた。教えのとおりに売り込んだ結果、出版を果たすことができた。専門家に相談したのが勝因だと思う。(35歳女性/33歳で独立)
×失敗:事業計画があいまいで、強みを活かせなかった
ターゲット客層や売り方があいまいなまま、マナー講師として起業。その結果、約1年間、ほとんど売り上げが上がらなかった。兄の会社で事務として働いて何とか食いつなぐことができたが、事業計画書も書かずにスタートしたことが失敗のもと。(39歳女性/37歳で独立)
▼中野'S eye
事業を成功させるには?
(1)人脈をつくる
(2)経営・専門分野の情報を収集する
(3)強みを磨く
当然のことながら、事業は顧客や親身になってくれる人がいてこそ、発展していくものです。また、経営や業界に関する有益な情報を、敏感にキャッチして逃さないことも大事。それにはやはり人脈がものをいいます。そして、事業の強みやウリに磨きをかけて、顧客にとって唯一無二のサービスや商品を提供することが、成功につながります。
中野裕哲
起業コンサルタント(R)
V-Spiritsグループ代表。「まるごと起業支援.com」を主宰。年間約300件の起業相談を無料で受け、多くの起業家を輩出している。主な著書に『一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」』(明日香出版社)など。

構成=福田 彩 イラスト=moko.