ありがたいことに、ドラマで向田邦子役を2度演じる機会をいただきました。向田さんの原稿のコピーをお借りして、家で向田さんの字の練習として、原稿約300枚を模写。ドラマのなかで登場する原稿はすべて自分で書き、永遠に色あせない“向田邦子像”に少し近づけたような気がしました。

上はパテック・フィリップの社内用の懐中時計図録。類似書は、Amazon等で購入可。下は美村さんの愛用時計コレクション。専用の木箱も購入して大切に保管。中にはシチズンなどの時計も一緒に。

向田作品もそうですが「一流のものとは何か」を考えるきっかけになった本があります。海外オークションで手に入れた「パテック・フィリップ」の懐中時計の図録です。

時を経て価値が増す懐中時計の魅力

その昔、時計師というのはとても尊敬される職業で、物理学、天文学、機械工学、芸術などを熟知していないとなれない職業でした。その卓越した技術によるパテックの機械式の懐中時計は価値が目減りしない。ハイブランドのバッグなどは使用すれば価値が下がりますが、アンティークの懐中時計は増えることのない希少性で、逆に価値が増すのです。

パテックの時計を初めて身につけたときは、分不相応だと尻込みしましたが「その時計に似合うようにあなたが成長していけばいいんだよ」と夫に言われて、そうだなと納得しました。一流品が似合うように、自分を成長させよう、時計が浮かないようにきちんと身なりを整えようという気持ちが大事だと考えています。

“怖い”という感情は、他の感情に比べてより直感的で、本能に近い。うまく表現できたら名作になりえますが、その半面、駄作すぎて笑うしかない作品も山ほど量産されています(笑)。そのくらいホラー映画は質の差が激しい。

そのなかで近年一押しは『死霊館』。善良な夫婦が主人公で、「彼らには、ぜひとも生き残ってほしい」と見ている人間をハラハラドキドキさせつつ、家族愛に絡ませた感動的なシーンも挟んで、ちゃんとハッピーエンドになるという、王道中の王道の秀作です。役者の演技が子役に至るまで全員素晴らしく、全編「怖さ」を外さない。浮かれた男女が飲酒運転して山奥に行って、怪物が出てきて胸の大きな女性が「キャー!」という映画とは大違いの仕上がりです(笑)。

ホラー系の映画から出世した監督は多いのですが、ジェームズ・ワン監督もそう。このジャンルは、状況説明が肝心なのでカット割りなどの技術力がないとNG。役者もホラーがうまく演じられれば応用が利く。恐怖に直面する緊張感を保ち、それをやり続ける精神力も必要です。一瞬でも気が抜けない演技。その必要性を思い出す意味でも『死霊館』を見返しています。