魔女の宅急便』などで知られる児童文学者の角野栄子さんは、とてもおしゃれ。そのセンス溢れる暮らしは創意工夫に満ちている。Zoom取材でパソコン画面に現れた角野さんは鮮やかな赤いトップスに同色のフレームの眼鏡を合わせ、背景には白地にかわいらしいキャラクターたちを手描きした手作りのバックを張っていた。「ちょっとでも楽しいほうがいいじゃない」と角野さん。得体の知れない不安に覆われ、旅することもままならない現在。空想の世界に旅立つことができる本や物語の力について聞いた。
今年、作家生活50年を迎える角野栄子さん。
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今年、作家生活50年を迎える角野栄子さん。

日常の変化にどう向き合うか

——2020年はライススタイルや働き方が大きな変化を求められた1年でした。ブラジルに移民されたり、語学留学されたりと、たくさん旅をしてさまざまな暮らしや価値観に触れてきた角野さん。ライフスタイルの変化にどう向き合っていますか?

【角野栄子さん(以下、角野)】私は幸いなことに家の中で1人で仕事をする人間なんです。ずっとそうだったから、コロナの影響で我慢を強いられたことは、ほかの人に比べて少なかったかもしれない。でも、コロナによる日常の変化に抑圧や閉塞を感じるのであれば、今は「自分はどうしたいのか」ということを自分で考える時機なのかなと、考え方を変えてみみたらどうでしょうか。

もちろん、「誰かと一緒にいたい」「誰かと話したい」というのは人間の性(さが)なんだけど、1人でいれば、自分で考えなきゃいけない。「友達が素敵な格好をしてるから、同じにしよう」「みんなと同じものを持とう」と誰かと比較して自分の行動を決めがちだった人も、「自分」がどう考えるか、「自分」がどう選択するかを考えるように自然と変わってくると思う。そうすると、暮らしに知恵と工夫が湧いてきますよね。