イラスト=岡田 丈

Q 固定給vs.ボーナス、上がりやすいのはどっち?
【KEY WORD】賃金の下方硬直性
A 日本の企業は固定給を変えない傾向にある
通常、社員のモチベーションは固定給が下がると大きく下がるが、日本ではボーナスが下がっても影響は少ないとされる。ボーナスを臨時収入と考える人も多く、「不景気だから下がっても仕方ない」と受け入れられやすいのだという。そのため企業は、景気が上下したとき、人件費を社員数や固定給ではなくボーナスで調整する傾向がある。

一方、固定給は景気がよくなっても上がりにくいが、逆に景気が悪くなっても簡単には下がらない。この、景気が悪化しても賃金が下がらない状態は「賃金の下方硬直性」と呼ばれ、多くの国で観察されている。

日本の企業は、景気の上下に、固定給ではなくボーナスで対応することで雇用を守ってきたと言える。

黒田祥子(くろだ・さちこ)
早稲田大学教育・総合科学学術院 教授
日本銀行、一橋大学、東京大学を経て現職。慶應義塾大学にて博士号取得。共著に『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(第5章、慶應義塾大学出版会)など。

構成=辻村洋子 撮影=小倉和徳 イラスト=岡田 丈