ぜひ身につけてほしい、NHK式3つのスキル
こうしたロジカルな話し方のよい見本は、私がNHKでお仕事をさせていただいていた時に学んだ“NHK式”です。ジャーナリストの池上彰氏もNHK式を実践しておられる方の1人。先日、池上氏が講演で使っていらっしゃった中から今回は3つほど、ご紹介しましょう。
(1)“疑問形”をうまく使う
1つ目は“疑問形”をうまく使うこと。これは先ほどのgoodかbadのように、結論を先に言って行き先を明確にしたあとに使います。この結論を先に言う方法を池上氏は著書『伝える力』の中で「話の地図を渡す」と表現なさっています。わかりやすい説明にするための話し方です。「話の地図」を渡したうえで、その後の話を疑問形で進めていきます。
池上氏は講演で「トランプさんが米大統領に当選しましたよね。これは世界にどう影響するのか? 皆さんはどう思いますか」と問いかけていました。そうすると聞いている人は「どうなるんだろう」と1度自分で考えてみる。しかし、答えはわからない。ですからその後の解説をよりしっかりと聞く準備を整えるわけです。
この“疑問形”をビジネスの場で使うとすると、たとえば新商品の提案場面。「皆さんの職場ではこういう問題がありますよね。そこで考えられる解決方法は何でしょうか」と問いかけます。聞き手に一緒に考えてもらうことで話の筋道が立ち、結果的に論理的に伝わります。
(2)“接続詞”をうまく使う
2つ目にうまく使いたいのは“接続詞”。1つ目の疑問形を投げかける方法で「なぜ~でしょうか」と問いかけ、その次に「なぜならば」「要するに」といった接続詞で話を展開していく方法です。「なぜトランプさんが米国民に支持されたのでしょうか。なぜならば~」と疑問形と接続詞とをワンセットで話していくのがコツです。
接続詞は大きく分けると3つあります。「なぜならば」など、その前の疑問形に答える“理由解説型”と、「要するに」「つまり」など、そこまでのことをまとめる“まとめる型”、そして「では」という“場面転換型”です。
この3つ以外に池上氏が講演やTV番組などでよくお使いになるつなぎ言葉があります。何だと思いますか? それは、「さあ」という言葉です。「さあ、そこでトランプさんは困りました」「さあ、慌てたのは欧米諸国です」といった使い方です。
この「さあ」を前例の新商品の提案場面で使うとすると「新商品には特徴が3つあります。1つ目は~、2つ目は~、3つ目は~。さあ、実際に使ってくださったお客さまの反応はというと……」というふうに使います。この「さあ」には「次に」という意味合いがあり、文章なら段落を変えるところ。明るめに言うのが正解です。