客観的に自分を見つめるために本を読む
ほとんどのアスリートがコーチをつけて意思決定までを任せていますが、僕はそれが嫌でコーチをつけませんでした。だからこそ、日ごろから客観的に自分を見つめたいと思い、本を大いに活用してきたんです。
もともと知りたがりな性格というのも大きいのでしょう。最近では、東京都知事の小池百合子さんが記者会見で使っていた「アウフヘーベン」という言葉が気になってしょうがない(笑)。周りにいる人に、「アウフヘーベンを知るにはどんな本を読めばいいと思う?」と聞いてみたら、方々からいろんな書名が出てくるんです。自分に知識がなくても、本好きで物知りの友達が多いおかげで、僕は「本」との出合いに恵まれています。未知の世界観に触れ、知識がどんどん広がっていくのが読書の魅力。気に入った本は、巻末の参考文献にも目を通して次々とリストに入れてしまうので、すでに一生かかっても読みきれないほどの数になっています(笑)。
『十二人の怒れる男』
監督:シドニー・ルメット
1957年・アメリカ
殺人事件の審議を巡り、陪審員が議論を戦わせていく法廷サスペンス。密室劇の金字塔として知られる。「室内でひたすら議論するだけの話なのに、個々の役者の表情、話し方など見応え十分。人間の心理が、行動にどう表れるかも見どころです」
スプリント種目の世界大会で日本人初のメダルを獲得。男子400mハードルの日本記録保持者。現在はSports×technologyに関するプロジェクトを行うDEPORTARE PARTNERSの代表を務める。著書に『諦める力』(プレジデント社)、『走る哲学』(扶桑社)など。
構成=堀 朋子 撮影=羽田 誠