『スターバックス再生物語』は全従業員が持つ
人事戦略を担う久保田美紀さんは「1番大切なのはパートナー(従業員)の自発的な成長を促すこと」と言う。そのためレーティングによる人事評価は行わず、対話を通してやる気やポテンシャルを引き出す方法を取っている。対話を担当するリーダーたちが集まる「リーダーシップ研修」では、『マインドセット』を基に思考が行動に及ぼす影響を学ぶ。
「相手の成長を願うなら、まず自分自身もGrowthMindset=成長思考になる必要があります。この本は、そうしたマインド(心のあり方)や対話力を身につけるうえで、とても役に立つ1冊です」
リーダーたちが陥りがちな思考や行動パターンに対して、理解と気づきを促すために『「学習する組織」入門』も活用。さらに、今後の研修を組み立てるための参考本として、いま人事担当者の間では『ジョブ理論』が読まれている。
「イノベーションを学ぶための本ですが、これを人事戦略に置き換えて活用したいと思っています。売れる商品には顧客の感情に働きかける力がある――。当社では『人事もマーケティング』と考えるので、人事戦略にもパートナーの心への働きかけが欠かせません」
同社の戦略の中心は「人」。全従業員が持つ『スターバックス再生物語』には、経営者自らの成功と失敗がつづられている。ここから浮かび上がる人間らしさこそ、同社の人材育成の原点なのかもしれない。
撮影=市来朋久、小倉和徳