企業の経営幹部や管理職を養成する講座では、どんな本を薦めているのか。雑誌「プレジデントウーマン」(2018年1月号)では4社に取材。今回は、スターバックスコーヒージャパンが社員に勧めている4冊を紹介しよう――。

スターバックスコーヒー ジャパン

「人」を理解し、成長を促す力をつけて

スタッフの温かく親しみやすい対応が印象的なスターバックス。店内にはコーヒーの香りが漂い、いつもくつろいだ雰囲気に包まれている。この雰囲気を支えているのが、従業員の自律的で能動的な行動と「人間らしさ」を重視する姿勢だ。

(左上)人材開発部 コーポレートラーニングチーム チームマネージャー 下青木聖子さん
(右上)オペレーションエクセレンス部 マネジメントサイクル開発チーム シニアスペシャリスト 高松美紀さん
(左下)人事部 部長 久保田美紀さん
(右下)スターバックス コーヒー 目黒店 ストアマネージャー 前田夏季さん
リーダーシップを養うための名著4選
▼『「学習する組織」入門』

小田理一郎 英治出版/1900円
▼『マインドセット』
キャロル・S・ドゥエック 草思社/1700円
▼『ジョブ理論』
クレイトン・クリステンセン ハーパーコリンズ・ジャパン/2000円
▼『スターバックス再生物語』
ハワード・シュルツ 徳間書店/ 1700円

『スターバックス再生物語』は全従業員が持つ

人事戦略を担う久保田美紀さんは「1番大切なのはパートナー(従業員)の自発的な成長を促すこと」と言う。そのためレーティングによる人事評価は行わず、対話を通してやる気やポテンシャルを引き出す方法を取っている。対話を担当するリーダーたちが集まる「リーダーシップ研修」では、『マインドセット』を基に思考が行動に及ぼす影響を学ぶ。

「相手の成長を願うなら、まず自分自身もGrowthMindset=成長思考になる必要があります。この本は、そうしたマインド(心のあり方)や対話力を身につけるうえで、とても役に立つ1冊です」

リーダーたちが陥りがちな思考や行動パターンに対して、理解と気づきを促すために『「学習する組織」入門』も活用。さらに、今後の研修を組み立てるための参考本として、いま人事担当者の間では『ジョブ理論』が読まれている。

国内1300店舗以上を展開する、米国シアトル発のスペシャルティコーヒーストア。従業員一人ひとりの自発的な成長を促す仕組みがマニュアルレスの現場を支えている。

「イノベーションを学ぶための本ですが、これを人事戦略に置き換えて活用したいと思っています。売れる商品には顧客の感情に働きかける力がある――。当社では『人事もマーケティング』と考えるので、人事戦略にもパートナーの心への働きかけが欠かせません」

同社の戦略の中心は「人」。全従業員が持つ『スターバックス再生物語』には、経営者自らの成功と失敗がつづられている。ここから浮かび上がる人間らしさこそ、同社の人材育成の原点なのかもしれない。